- 作者:有栖川 有栖
- 発売日: 1994/07/10
- メディア: 文庫
一発目はこちら。
以前のブログから今日の間までに何冊も読んでいるわけですが、
それらの本の感想はまたその内に書ければと思います。
さてこの『月光ゲーム』を読むに至った経緯を説明したいと思います。
本来は自分が読みたいと思って手に取ったのはこの月光ゲームから始まる「学生アリスシリーズ」の中の『双頭の悪魔』という本でした。
『双頭の悪魔』を手に取った時は、恥ずかしながらシリーズ物だとは知らずに購入してしまい、あとからシリーズ物だと知りました。
シリーズ物ならば最初から読まねばと思い、調べるとこの「月光ゲーム」が一作目だと知った次第です。
そうしたところ、この「月光ゲーム」の副題にもなっていますエラリー・クイーンの『Yの悲劇』どころかクイーンの本をまだ読んだことがなかったため、『Xの悲劇』、『Yの悲劇』、『Zの悲劇』、『レーン最後の事件』をまず読んでから取り掛かろうと思い、それらを読んでからこの本に突入したため、紆余曲折あった末の本作なので相当期待していました。
読んでみた結果、エラリー・クイーンの作品も読んでからにすればよかったと思いました。
まず推理小説好き初心者の自分からすると、主人公アリス達の所属する推理小説同好会の面々が色々な推理小説を話の種として出してきますが、殆ど分かりませんでした。
やはりせめて、クイーンの国名シリーズを読んでからにすればよかったです。
さて、ここからが感想。
所謂クローズト・サークル物ですが、舞台が活動しだした火山の中で、犯人も含めて殺人以外の自然災害で死ぬかも知れないという恐怖は読む側にもスリルを与えてくれました。
スリルという意味で言えば『屍人荘の殺人』よりもよっぽど良かったです。
殺人以外で死ぬ可能性がある、だが殺人で死ぬ可能性もある、というのは登場人物達の心理をかき回し、一蓮托生の場面もあれば、お互いに疑心暗鬼になる場面もあり、細かい描写部分がとても面白かったです。
そんな舞台の中で吐かれる台詞は本筋とは関係ない細かい台詞でも妙にリアリティがありました。
「歩けるのね」なんてまさにそんな感じ。
しかも読者に対してもミスリードが沢山あり(自分だけかも知れませんが)、
「色感に異常が・・・ってのがヒントになってるのでは!?」
「あいつと仲良くするなっていうのは一体・・・?」
「あれだけ大事にしてた物がきっかけに・・・?」
なんて幾つも疑わしいことが提示されていて、ついつい考えすぎてしまいます。
登場人物たちが学生ということもあり、割とみんな感情的に動いていくのでどんどん謎が深まっていく感じがします。
お話として面白いかどうかということでは、正直微妙な感じがしますが、全体的には読みやすく読後感も悪くなかったです。
探偵役の江神も魅力としては十分感じることが出来ました。
ただ一つ文句を言いたいのは登場人物をニックネームで読んだり本名で読んだりと統一されてないキャラが居て、「あれ誰だっけ?」となる瞬間がありました。
登場人物自体、多くはないと思いますが少なくもないのでそこはちょっと混乱してしまいました。
ちなみに肝心のダイイング・メッセージの「Y」については個人的には「なるほどね」と素直に思いました。
所謂「そりゃないよ!」という感じの解答ではなかったと思っています。
やはりこの本で一番良かったと個人的に思っているのは、舞台が噴火し出した火山の真っ只中ということ。
ミステリーとスリルが上手く合わさり、そして生き残った者たちが迎える結末は意外とあっさりしていますが、かえってそれが心地よく感じました。
次の『孤島パズル』も勿論読みますが、その前にクイーンの国名シリーズを読んでからにするか、ちょっと悩んでいます。
『月光ゲーム Yの悲劇'88』
★★★★☆/(4点)