自分は中学生の時に赤川次郎やシャーロック・ホームズを読んでいましたが、
その後は殆ど本なんてライトノベルくらいしか読まなくなってしまいました。
ところがあるきっかけがあって、『オリエント急行の殺人』を読んでクリスティにすっかり魅了されることになり、今でもクリスティは大好きです。
さて、そんなクリスティも半分以上は間違いなく読んでいますが全部読んでいる訳ではありません。
それでもあえて個人的ベスト3を上げるとすれば、
1位:『アクロイド殺し』
2位:『オリエント急行の殺人』
3位:『五匹の子豚』
となります。
全部ポアロ物ですね。
1位と2位は言わずもがなの名作で忘れようがありません。
ただ正直『五匹の子豚』に関しては「とにかく面白かった」という思い出は自分の中で強く残っていますし、お話としても何となくは覚えていますが、「じゃあどういう本なの?」と聞かれても今は説明出来ない気がする、とふと思い再読しました。
恐らく読むのは10年振りくらいになるかと思います。
やっぱり面白い、そしてとても読みやすい、そして鮮やかでした。
この本はクリスティの物で時々出てくる、回想と現在が入り混じる、過去に解決されたとする殺人事件を解き明かしていくお話になります。
その事件に関係する5人の人物から事件当日の話を聞いていき、その証言を元にポアロが真実を突き止める話となっています。
正直トリックとしては何てことないトリックだとは思います。
といっても、自分は殆ど真犯人や真実を自力で突き止めることが出来ません。
推理小説家と手品師は本当に凄いと思います。
何でもないトリックをさり気なく盛り込んで読者を欺く。
その「やられた!」という感じが最高にわくわくして大好きです。
またこの本で印象的なのはやはりエイミアスの描く「絵」です。
活字なので想像しか出来ませんし、自分は絵には詳しくありません。
それでも何故か、不思議とこの絵は力強く想像出来てしまうのです。
出てくる登場人物たちは1人を除いて死んだエイミアスの描く絵を絶賛しています。
絵なんてよく知らないという人もです。
かくいうポアロもエイミアスの絵に圧倒される場面があります。
この絵が読者の想像をより搔き立て、この本を鮮やかに彩るのに一役買っていると、
自分は思います。
それと登場人物たちの棲み分けがしっかり出来ていて、とても読みやすいというのも大事です。
またこれが最も大事だと自分は思っていますが、お話としても抜群に面白いです。
トリックがどうこう、犯人がどうこう以前に物語として純粋に楽しめる本だと思います。
5人の事件関係者は16年前の事件を思い起こしていくなかで、
それぞれが知らなかった事実が出てきたり、
さほど重要でないと思っていたことが実は重大だったことが分かったり、
またそれぞれの思いの内を正確に見抜けていなかったおかげで勘違いしていたり、
とにかく物証で科学的にというよりも人間の心理面を追求していくお話になります。
まさにポアロ物の真髄とういうことであればこの『五匹の子豚』になるのではないでしょうか。
自分はそう思います。
それが犯人の意外性にも表れていると思います。
ポアロ物はシリーズ物ではありますが、基本的にはどこから読んでも大丈夫です。
もしクリスティが読みたいとなれば、この『五匹の子豚』から読むのもアリかと思います。
ただし思い越す限りですと、『もの言えぬ証人』と『死との約束』に関しては他の物語の話が少し出てきますので要注意です。
細部は忘れていたので再読でも十分楽しめました。
約10年の時を経て再読しましたが、また読みたいと思わせてくれるくらい、
やっぱり大好きな1冊でした。
『五匹の子豚』
★★★★★/(5点)