前々から気になっていた作品です。
何年か前にドラマ化したのを覚えていましたが、ドラマは観ていません。
そういえばと思い、ドラマ化した時にZepp DiverCityにライブに行った時に撮った写真を思いだし、探したところまだありました。
何故こんな写真撮ったのか、よく分かりません。
妙にエロいからか?
ドラマの話は一旦置いておき、本の中身についてです。
読んでいて『魍魎の匣』が頭をよぎりました。
窓のないコンピューターで管理された建物で研究を続ける人々、そして密室で起きる事件、そして天才の登場・・・。
共通点は結構あると思います。
しかし、『魍魎の匣』は怪談めいた不気味な様子と幾つもの事件が重なって一つの結末に収束していく様子が文学的で堪らない一冊ですが、こちらはもっと数学的なトリックが仕掛けられた一冊でした。
『すべてがFになる』というタイトルには勿論意味があるのですが、説明されるまで全く分かりませんでしたし、分かるはずもありませんでした。
その筋の人が読み進めたら閃くものがあるのかも知れません。
ただ、意味が分かった時には「なるほど!」と素直に思えました。
しかしながら、密室トリックの謎については驚く程に単純というか、間抜けというか、ちょっと脱力ものでした。
登場人物たちは魅力的ではありますが、感情移入しにくい人たちばかりでした。
恋愛要素や青春感がありつつも、天才だの独特の価値観の持ち主ばかりなど、引き込まれたと思えば突き放されるの繰り返しだったように思います。
ただし、おかげで飽きずに最後まで読むことが出来ました。
事件の真相については全く想定していなかったもので、急に感情的にしゃべり出す萌絵に「そこは探偵役に喋らせてよ・・・」と少しイライラしましたが、最終的には探偵役の犀川がきっちりとまとめてくれました。
シリーズの1作目ということで二人のバックボーンが断片的にか見えませんでしたが、逆にそれがこの先のシリーズも読みたいという気にさせてくれます。
『魍魎の匣』も『すべてがFになる』も最後まで読むとより共通点が浮き彫りになる気がしますが、『魍魎の匣』はSF的でオカルトチックなところがありますが、『すべてがFになる』は流石理系ミステリーと言われるだけあり、論理的に話が進んでいきます。
ただし、心理的な面は独特な価値観の持ち主たちにかき消されてしまっている気がして、オカルト的な要素も多く論理的とは言い切れないけれども、人間味のある『魍魎の匣』の方が遥かに好みでした。
お話としては面白かったです。読後感も良し。
ちなまに驚いたんですが、読了後に「すべてがFになる」のwikiを見たところ、なんとガッツリとネタバレも含めてあらすじが書いてありました。
肝心のトリック部分も含めてだったので、これって良いの・・・?と衝撃を受けました。
読む前にネタバレを見ないように気を付けていたので大丈夫でしたが、今後もちょっとした恐怖です。
『すべてがFになる』
★★★★☆/(4点)