自分が読んだのは5年ほど前に新潮文庫から出た物です。
何故その補足を先にするかと言えば、そちらの方の辻村深月さんが書かれている解説がとても良かったからです。
ちょっとグッと来ました。
それくらい個人的には良かったです。
さて肝心の本編ですが、こちらも予想よりも遥かに面白かったです。
江戸川乱歩は傑作選くらいしか読んだことないんですが、面白かったと記憶しています。
そちらの方は不気味で妙に妖艶な雰囲気で、これぞ日本の推理小説という感じでしたが、少年探偵団シリーズは全く違いました。
正直、緻密な推理合戦が繰り広げられる訳でもなく、ドキドキ・ワクワクなトリックが仕掛けられている訳でもなく、ドラマチックな展開がある訳でもありません。
しかし本書の魅力は何といっても悪役の怪人二十面相でしょう。
捕まる寸前まで追い詰められても辛うじて逃げ延びて、太々しい態度で去っていく・・・。
その自信に溢れた態度がいつ崩れるのかとワクワクしました。
一応頭が良いという設定のようですが、少なくとも本書の計画は杜撰な様な気がします。
何人もが怪人二十面相に騙されていく訳ですが、正直「これは騙される方が悪くない?」と思ってしまうようなことばかりです。
しかしまぁ、それは些細なことです。
この悪役は後々の「金田一少年の事件簿」や「名探偵コナン」にも通ずる部分があるのではないでしょうか。
やはり名探偵よりも悪役の方が強くなってしまうのは、悪役の方が魅力的だからなのかな、なんてことを読みながら思っていました。
また怪人二十面相のライバルにあたる明智小五郎が最後の方まで出てこないのも、かえって後半部分の高揚を誘います。
流石は日本の三大名探偵といったところか、全てお見通しです。
ちょっと都合の良すぎる罠を仕掛けるところは頂けなかったですが、日本の名探偵としての魅力はやはり素晴らしいものがあります。
と言っても、明智小五郎の魅力と言えばやはり「心理試験」や「屋根裏の散歩者」の方が数段も上かと思います。
でも逆に本書の方が理屈っぽくなくて、非常に読みやすいと思います。
本書のもう一つの魅力はストーリーが簡潔で、読みやすいというのは大きいと思います。
このおかげで老若男女問わず楽しむことが出来ると思います。
物語やトリック等の深みは無いかも知れませんが、日本の推理小説の魅力を最後まで飽きずに読むことが出来るのは、江戸川乱歩ならではないでしょうか。
『怪人二十面相』
★★★★☆/(4点)