所謂ライトノベルと言われる作品です。
なので、本格ミステリーとは言えませんが広義の意味では十分ミステリー小説と言えると個人的には思います。
あなたが一番好きな本は何か?と聞かれれば
「電波的な彼女シリーズです」と答えるくらい好きなシリーズです。
新装版が昨年に刊行されたというのは知っていたので、いずれ再読したいとずっと思っていましたが、丁度作中が梅雨の時期の話でもあるので、今しかないと思って買い求めました。
そう、本作のキーワードは「雨」です。
確かにライトノベルらしい設定が満載ではあるのですが、読みやすい文章とのめり込むくらい面白いお話で、再読が学生の時以来の今回でもあっという間に読めてしまいました。
ただ再読してみて、犯人の最後の事件の動機だけがどうも納得出来なくなっていました。
それでもやっぱり面白かった。
自分がこの作品を初めて読んだのはまだ高校生の頃だったので、いきなり大の大人がこの作品を読んでこの設定や世界観にのめり込めるか、と言われるとそれは何とも言い難いです。
でも、ハマる人にはハマると思っています。
ざっくりと説明すると・・・
主人公の柔沢ジュウは不良なんですが高校生にしては大人びた性根は優しい青年、
そしてヒロインの堕花雨(オチバナ アメ)はタイトルの通り電波的な少女、
この二人が巷を賑わせている連続通り魔殺人事件にあるきっかけから巻き込まれていく物語です。
ヒロインの雨の電波的なやり取りが面白いんです。
ジュウと初対面のシーンでいきなり、
「我が身はあなたの領土。我が心はあなたの奴隷。」
なんて言ってくるヤバイ奴なんです。
他にも雨の妹にジュウの事を「あの男は誰!」と問い詰められるシーンがあるのですが、
「ジュウ様は私の主だと」
「それから?」
「わたしを、ジュウ様の奴隷にしていただいたと」
この後ジュウは頭を抱え込みたくなったと回想していますが、気持ちはよく分かります(笑)
こういうライトノベルらしい設定は確かにあるんですが、この犯罪に満ち溢れている世界観の中で失くしたくないものを見つけていくジュウの姿が自分は好きなんです。
もうこの本の魅力を書きだしたら細かい部分まで書いていきたいくらいですが、それはまたの機会にしましょう。
最初にも書いた通り、本作は決して本格ミステリーとは絶対に言えません。
推理するようなポイントも殆どありません。
でもこの本で描かれている事件とその背景、犯人の動機や信条・心情、不穏な空気の世界観、事件解決への道のり、これらミステリーに必要な要素がライトノベル風にアレンジされているだけだと思います。
ライトノベルだからミステリーとは呼べない・・・なんてことは自分はないと考えます。
自分はこの作品のライトノベル的な部分も込みで大好きです。
その部分が受け入れられるかどうか、それは個人差があるとは思います。
ただ、これをライトノベルなんて・・・と言われてしまうのはちょっと勿体ない気がします。
読んだことはありませんが、西尾維新の『クビキリサイクル』はライトノベルでも本格ミステリーと言える出来栄えだとか。
そもそもライトノベルとミステリー小説の区別なんて、曖昧なものなのでは?
ミステリー小説と文学小説の区別だって曖昧なものなのでは?
今になって『電波的な彼女』を読むと、そういうことを考えてしまいます。
自分が読んだライトノベルではないミステリー小説の中にもライトノベルと変わらないと思えるものはありますからね。
逆に自分がミステリー小説だと思わずに読んだ小説がミステリーに分類されていることもあったり。
そんなことを考えつつも、結局ミステリーかどうかなんてどうでも良いやという結論に結局達してしまいます。
そう、面白ければ何でもいいやと。
とにかくワクワクさせてくれればなんでも良いやと。
そういう意味では、やっぱり自分は真のミステリー小説好きとは言えないのかも知れません。
そもそも初心者ですが・・・。
話が逸れてしまいましたが、本作は舞台が高校ということもあり、青春要素も勿論あります。
陰惨な事件が起こる不穏な世界の中でちょっとずつ成長していく若者のお話。
いくつになってもこのシリーズが楽しめる自分で居たいものです。
ちなみにこのシリーズは「紅シリーズ」と世界観を共有したクロスオーバー作品でもあります。
「紅シリーズ」を知っていると、より楽しめると思います。
「電波的な彼女シリーズ」は全3巻しかありませんが、2巻以降も再読するつもりです。
1巻は梅雨の時期で丁度良いと思ったのでこのタイミングで読みましたが、2巻は梅雨明けしてから読もうと思っています。
久々に再読したけど、やっぱりメチャクチャ面白かったです!
『電波的な彼女』
★★★★★ / (5点)