ファイル3ですが、自分は刊行順に読んでるので『本陣殺人事件』に続いての2冊目の金田一耕助シリーズとなります。
この『獄門島』はずっと読みたいと思っていた1冊でした。
金田一耕助といえば映像化も何度もされているほど有名なシリーズですが、幸運なことに(だと勝手に思っているのですが)自分は一度もそれらを観たことはありません。
ただ、金田一違いですが『金田一少年の事件簿』のドラマには大いに影響を受けています(これは冗談ではなく、結構本気です)。
とは言え、金田一耕助シリーズと少年シリーズでは全く別物ですけどね・・・。
そんな恐らく日本一有名な探偵と言っても過言ではない金田一耕助シリーズの中でも特に評価の高い1冊がこの『獄門島』だと思います。
表紙が既におどろおどろしいですが、中身も表紙と違わぬおどろおどろしさです。
タイトルの通り獄門島で起きる事件ですが、「本陣殺人事件」と同じく旗本・跡継ぎ・本家と分家・戦争・盛者必衰の理等々の戦中・戦後の日本が舞台となっていますので、昔ならではの仕来りや人格、風潮等が事件の背景には欠かせません。
それがあってこその金田一耕助シリーズとも言えるのかもしれません(自分はまだたった2冊目ですが・・・)。
今作の真相は全くの予想外でした。
しかし判明してみれば、なるほど何故そう考えなかったのか!と思う内容でした。
それは事件のトリックのことではなく、いわば動機の面、心理の面、そして事件全体の捉え方そのもののことです。
何故気づかなかったのか、それは自分が至らないということは当然のこととしても、ミスリードが巧みだったような気がします。
思い返してみれば、この本に仕掛けられたミスリードは一つや二つでは済みません。
そしてまんまとミスリードに引っかかって考えを巡らせている内に、別の考えには及ばなくなっている・・・。
見事にしてやられました。
今作の特徴は「キチガイ」です。
正直これって現代だと不適切な表現になってしまうと思うのですが、事実そうなのだから仕方ありません。
そう、この舞台の獄門島の人々は狂人ばかりなのです。
特にこれ獄門島に限らずですが本家と分家、跡目争い、遺産を巡るいざこざ・・・等々は往々にして人を狂わせます。
しかし、この獄門島にはそういうきっかけが無くとも、そもそもが狂人の血を引いた人々なのです。
それが何といっても魅力的に思えるのです。
そして、狂人だらけ故に被害者たちもまた狂人・・・。
なので、これは最後に真犯人が述べていますが「殺して惜しいような人間でなかった」とはっきりと言っています。
実際問題、それは読者側も思わないことも無いことです。
だからこそ、読み終わってみると被害者よりも加害者に気持ちが同調しかけて、ちょっとしたやるせなさを覚えてしまうのです・・・。
それでも金田一は謎を見事に解き明かしていきます。
運命としか思えない事件に巻き込まれてしまった金田一ですが、その終わりは少し切ないものになっています。
『獄門島』・・・確かに面白かったです。
『獄門島』目当てに読み始めた金田一耕助シリーズですが、今後も少しずつになるでしょうが読み続けたいと思っています。
次も恐らく刊行順に沿って読むと思います。
とにかく、日本の推理小説史上におけるマスターピースを読めて満足です!
『獄門島』
★★★★☆ / (4点)