キンドルの無料版です。
『黒死館殺人事件』に続き、日本三大奇書の2冊目も読破しました。
まずはネタバレなしの感想から。
『黒死館殺人事件』に比べると遥かに読みやすく、理解しやすい内容でした。
ただし、それでも難解なことには違いありません。
自分も読み終わってからネットで色々と解説を読んで理解を深めました。
この本は今でも議論が交わされるほど推理が最後まで分かれるようですが、解説を読んで理解を深めたことでこの本の本質は大体分かったつもりです。
導入部分は分かりやすくて良いのですが、中盤に差し掛かるちょっと前あたりから精神科学や脳科学の話が押し寄せてきます。
この辺りの話は理解は出来るのですが、いよいよ混乱してきます。
終盤あたりでは推理というか推測というかが行ったり来たりして、一体何が本当の話で何がデタラメなのかが分からなくなってきます。
色々な解説を読んでみても、結局は全ての事実の裏付けが出来るわけではないので、それが今でも議論を呼ぶ原因なのでしょう。
というように、とにかく難解というか主人公さながらに読み手の自分も混乱させられて、何が何だか分からなくなってしまう・・・というのがこの本の特徴ではないかと思います。
特にやはり終盤部分の事実があやふやで何が幻で何が現実なのか、何が真実で何が嘘なのか、そもそも一体何が起きているのか・・・思い返すと益々混乱してきそうです。
が、読んでる最中よりも読み終わってからの満足感が強いです。
もう一度読んでみたい・・・というか読むべきなんだと思いますが、中々骨が折れそうですので、実際に再度読むかは分かりません。
でも、より理解するためにはこの本は2度読み推奨ではないでしょうか。
もしくは本作も『黒死館殺人事件』と同じで「マンガで読破シリーズ」を読むのもアリかも知れません。
『黒死館殺人事件』の「マンガで読破」も早く読みたいのですが・・・。
ここからは少しネタバレありで。
当ブログは基本今まで意識的にネタバレを書いたことはなかったんですが、この作品については例外にしたいと思います。
(今までも無意識にネタバレしてた可能性はありますが・・・)
この本の本当の感想を書こうと思うとどうしてもネタバレ無しでは不可能なのです。
ここからネタバレ。
主人公が一体何者なのかということは最後まで明言されることはありませんが、千代子の検死報告にあった子宮の状態から見ても恐らく呉一郎でほぼ間違いない、というのは解説を見ても納得できることでした。
そうすると正木が父親で、また絵巻を見せた張本人ということなります。
これも納得です。
一方の若林の悪役ぶりが自分は本編を読んだだけだとイマイチ分かりませんでした。
これは解説を読んで、納得いくにはいきましたが・・・納得いってからよくよく考えてみると、こいつはとんでもない奴でした。
正木と同じか、もしくはそれ以上かも知れません。
それと、モヨ子の蘇生のくだりがちゃんと理解出来ていない気がします。
そもそも解説を読んでも、唯一特定出来ないのがモヨ子ですよね。
一体何者・・・?
それとイマイチ分かっていないのが絵巻の白紙部分について。
ここは本当に白骨化された絵が描かれていたのか、またそれを見ていた時の呉一郎の精神状態はどうだったのか、正木はその白紙部分と千代子の最後の言葉を見たのか・・・。
この白紙部分を見つめる呉一郎の描写が何故か頭から離れません。
そして中盤あたりから書かれていた精神科学や脳科学の論文は、読み終わってから思うと必要な内容でした。
でも、それを完璧に理解する必要は無いと思われます。
アンポンタン・ポカンのくだりは伏線だったのか・・・と読み終えてみると奇妙な驚きがあります。
ネタバレは以上。
これから暫くは『ドグラ・マグラ』の書評や解説を読み漁りそうです。
『黒死館殺人事件』より理解しやすいため、ハマり易いですね!
そして考えても考えてもわからないこのループが『ドグラ・マグラ』の本質なんでしょう。
恐るべし・・・。
読了してみるとこの本の魅力というのが良く分かります。
理解出来ないと突っ張るのではなく、理解出来なくとも一度最後まで読んでみることをオススメします。
理解の促進は読了後にマンガやネットで解説を読めばある程度はよく分かりますから。
その頃には既にこの作品の虜になっているかも知れません。
ある程度は理解出来たとしても完全には分かり切らない、というのが非常に魅力的になっていて、先にも述べた通り読み終わってみるとどんどん興味が湧いてくる不思議な魅力があります。
そして不明瞭な部分をより理解したいと求めてしまう…そういった奇妙な魅力が病み付きになりそうです。
それくらい強烈な一冊でした。
『ドグラ・マグラ』
★★★★★ / (5点)