国名シリーズの第六弾です。
事前に何となく目にしていた評価だと「一番つまらない」という人も居れば「言うほど悪くない」という意見もあったり、特に評価が割れていた印象でした。
読了後の自分の感想としては後者になります。
『ローマ帽子の謎』同様に大観衆の中で起きる殺人事件です。
ただし、『ローマ帽子の謎』は観客に殆ど気づかれることなく静かに被害者が殺されていったのに対し、今作では大勢の観客の前で堂々と殺人が行われることになります。
何故そんなことが可能なのか?
正直、読了後もそこのところは理解不能です。
何故誰の目にも付かなかったのか?
凶器の問題、動機の問題等はある程度は飲み込むことも出来ますが、その点だけはどうにも納得いきませんでした。
上記の点は目くらましで騙された訳でもなく、本当に読み終わった後まで意味不明でしたが、一体どこから銃撃されたのかという点についてはすっかり騙されました。
自分の今回は何となく推理しながら読み進めていたのですが、この「一体何処からどうやって?」という疑問に答えが出ませんでした。
結局「どうやって」というのは無理矢理収められら感じがしますが、「何処から」というのは「なるほどね」とスッキリしました。
また、この事件の最大の謎は「凶器は何処へ?」ということだと思います。
これについては自分の考えは7割ほどは当たっていました。
というのも、自分のルーツである『金田一少年の事件簿』のある作品(作品名を出すとネタバレになるので伏せておきます)でこれと似たような凶器消失トリックが使われていたからです。
勿論『金田一少年の事件簿』の方が本作よりずっと後ですので、この『アメリカ銃の謎』で使われたトリックがモチーフになっていた可能性は高いかと思っています。
ただ自分は回収されることまでは予期していなかったので、3割は外れたということで。
当たったも外れたも、そもそも似たトリックを事前に観てたからであって、自分の発想では一切無いんですけどね。
犯人ついては全くの予想外・・・というより予想の斜め上を行かれた感じです。
その発想と気づきはなかったよ。
ただヒントは散りばめられていたので、そこはフェアだったのかなという見解です。
ただし、動機の面から犯人を推理するのは不可能となっています。
何故なら動機については最後まではっきりしないからです。
結局読者側からすると推測の域を出ない解答で、そこはちょっと残念。
残念なところが確かに目立ちはするんですが、自分はこの作品嫌いじゃないです。
というのも、国名シリーズの中では一番人物描写が出来ていたように感じたからです。
ちょっとずつ良くなっていたものの、やはり国名シリーズの人物描写は淡泊過ぎて自分にはつまらなかったんですが、今作は珍しくこの問題はクリアしていたかと。
ただし、人物描写を広げるだけ広げて一切回収されないのが残念。
この辺はクリスティだったらきっちりやるところですので、クリスティ好きの自分としてはどうしても気になる点。
今までにない素晴らしいジャンプを見せてくれたけど、着地失敗という感じです。
着地失敗は人物描写に限らず事件解決についてもそう言えるかも知れません。
全体的な評価が低いと元々知っていたこともあったからか、意外と自分は楽しめました。
こういう大味な作品も悪くないですね。
西部劇が絡むというのも興味が魅かれました。
さて自分はここまで創元推理文庫から出ている新訳版を読んできましたが、新訳版が出ているのは現在のところ本作の『アメリカ銃の謎』までとなっています。
前にも何かで書いたんですが、自分は国名シリーズは『シャム双生児の謎』までは絶対に読むと決めています。
となると、次の作品はやっぱり角川文庫から出ているものになるでしょうか。
表紙があまり好きでないんですが・・・。
CDでも本でもジャケットは大事です。
でも他に選択肢が無いようであれば仕方ないと思っています。
国名シリーズと呼ばれるものは残り4作品だと認識していますが、4つとも読むべきなのか迷っています。
とりあえずシャム~を読んでライツヴィルシリーズに入るのも良いかなと思っています。
何はともあれ、嫌いじゃなかった『アメリカ銃の謎』です。
『アメリカ銃の謎』
★★★☆☆ / (3点)