読了してから少し間が空いてしまったので、記憶違いがあるかも知れません。
前回の記事て『ラバー・ソウル』をハードボイルド物だと勘違いして読み始めたと書きましたが、それもあって次はハードボイルド物を読みたいと思っていました。
未読の物で読みたいと思っていた自分のリストの中で、最初は絶対外れないだろうと思っていた『新宿鮫』(内容は一切知りません)を読もうとしていたんですが、これまたずっと読みたいと思っていた『長いお別れ』が新訳版で創元推理文庫から4月末に出ることを知り、急遽切り替えて本作を選びました。
『新宿鮫』はまた今度ということで、絶対読みます。
さて新訳版の『長い別れ』ということで、自分は初読ですので代表的な清水俊二さん訳の物や村上春樹さん訳の物と比較は出来ません。
この翻訳による作風の違いについてはあとがきで詳しく書かれており、それもなかなか面白かったです。
さてハードボイルド物の代表格と言える本作ですが、シリーズ物の中の一冊だということは知りませんでした。
ハードボイルド物ではキャラクターがとても大事になると思いますが、本作の主人公・マーロウはとても魅力的だと読み初めてすぐ感じました。
他人を思いやるというタイプではなく、自分が思ったように行動する結果がたまたま他人を救う場合がある、というようなタイプの男だと認識しています。
ちなみに本作だとメッチャ強そうだなと思える描写はありますが、戦闘シーンはそれほど多くありません。
主人公マーロウとレノックスの奇妙な友情の物語なんですが、レノックスが出てくるのは序盤だけになります。
その後はレノックスの容疑を晴らすチャンスが訪れ、その為に?奮闘するマーロウの姿が描かれています。
それもレノックスを思いやって、というよりもレノックスを信じた自分を信じて行動していると言う方がしっくり来ます。
キャラクターは好きだと思える人物も多いんですが、内容はただただ長かったような印象でした。
推理小説らしく、色々な行動や事実には裏がある訳です。
マーロウは自分で推理をしていて、それに基づいて色々な行動をしているようなんですが、どんな推理を組み立ているのかは読者側にはよく分かりません。
段々と何となくの推理が出来るようにはなってくるんですが、それは大体の事に片がついてからになります。
それは他の推理小説でも同じなんですが、情緒不安定な人物が多くて読んでいて疲れてしまいました。
アメリカ人らしいと言って良いのか分かりませんが、感情的に話す人物が多い中でマーロウだけが冷静だった気がします。
そのマーロウも回りくどい慎重なやり方(最後は大胆)で、それもある意味しんどかったです。
「別れを告げるということは、ほんの少し死ぬことだ」
これが本作の全てを表している台詞だと思います。
考えるな感じろ、と言わんばかりの男らしい雰囲気と読後感は好きです。
ただその余韻に浸るというよりも、「長かった…」と思ってしまったことは否めないです。
レイモンド・チャンドラーの他の作品も読んでみたいとは思いました。
『長い別れ』
★★★☆☆ / (3点)