これまた久々の柚月裕子作品です。
同僚に借りた作品でもあります。
柚月裕子のデビュー作で評価も高かったので読みたいと思っていた作品ではありました。
しかし残念ながら個人的にはイマイチでした。
特殊能力を持った少年と臨床心理士の主人公がとある事件の調査を進めて行くミステリー小説となっています。
これはレビューに多く書かれていたことですが、無駄に性描写が多い気がします。
ただ、自分はそれが不快でこの作品がイマイチだと思っている訳ではありません。
(それでも、やはり「無駄に」性描写が多い気はします。)
まず登場人物の造形、特に主人公のキャラクター像がどうもしっくり来ません。
『朽ちないサクラ』の主人公とかなり似たようなキャラクター造形のような気がして、バリエーションの無さにガッカリしてしまったのが否めません。
それと、少年側に感情移入していく主人公に自分は付いていけませんでした。
そこは職業上の使命感からと言われればそうなのかも知れませんが、自分にはそうとも解釈できず、どちらかと言えば一見冷めた態度を取る主人公の協力者である栗原の台詞にいちいち頷いてしまいました。
更にもう一つ、これはミステリーとしては話の持って生き方が下手な気がします。
犯人が分かってしまうとミステリーとしての魅力に欠ける、と自分は必ずしも思っている訳では無いのですが、それでも今作の物語の運びから根拠は無くとも「犯人こいつじゃね?」というのが分かり易す過ぎました。
1つだけ揺さぶられたミスリードがあって、「犯人がこっちだったら意外だな!」と思っていましたが・・・。
結局は自分が考えていた通りの運びとなってしまいました。
全体的に、全てにおいて中途半端だった印象です。
少年の特殊能力にフォーカスを絞って『心療探偵八雲』シリーズのように運ぶのもアリ、もしくは臨床心理士という職業にフォーカスを当ててもっと内面をえぐる様な展開にするのもアリ、あるいは本格ミステリーとして仕上げるのもアリだったと思います。
しかしそれらのどこに着地する訳でもなく、斜め上の着地点に到達してしまったような印象です。
これがデビュー作ということですが、デビュー作はこんなものだよね、といった妥協した感想も自分は持てず、繰り返しになりますが中途半端で印象に残らなさそうな作品でした。
『臨床真理』
★☆☆☆☆ / (1点)
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