元々いずれ読みたい作品でありましたが、このタイミングで読んだのは店頭に平積みされていたからです。
QuizKnockの特集?フェア?でメンバーがセレクトした本が一角に大量に並べられていました。
最近は全く見てないですが、以前はQuiz Knockの動画もよく観てました。
(それを見て懸命に勉強しなかったことをよく後悔したものです。)
で、折角だからそのセレクトの中から一冊読んでみようと思いまして。
意外とこういう企画は気になってしまいます。
それでちょっとだけ迷いましたが、殆ど自分の中ではこの作品を選ぶことは決まっていました。
ちなみにQuiz Knock代表の伊沢拓司氏推薦です。
事件の全ての発端は東大全共闘の頃に遡ります。
如何にも学生運動の参加者らしい桑野と、一方で何処か冷めた感じのする島村のコントラストが印象的です。
主人公は島村の方になり、全て島村の視点で物語は進んでいきます。
この作品の魅力といえば、やはり登場の織り成すハードボイルドさでしょう。
特に主人公の島村は口で言い負かされる場面も多いですが、そこはやはり東大中退者らしいキレ者っぷりが発揮される場面も多々あります。
言い負かされるシーンも全て潔く、自分の能力(魅力と言い換えても良いかも知れない)を自分では高く見積もっておらず、自分のダメダメな部分ばかりを自分では見つめていますが、それでも芯のある性格と行動力が周りを魅了していく様子は気持ちいいものです。
島村に関わってくる登場人物も魅力的な人物ばかりで、こうも急に信頼感のある人間関係を築けるというのは浮世離れしつつも主人公の「頼れる男」感が一段と高まって自分は好きです。
ただし、ハードボイルドとしては最高に魅力的だとは思いますが、帯にも書いてあり事前に知っていた「史上初の江戸川乱歩賞と直木賞のW受賞!」という期待値を越えるほどの面白さには達しなかった、というのが自分の感想です。
確かに読みやすいし、ハードボイルドな魅了も抜群です。
物語の展開も二転三転として良いのですが・・・。
チープな言い方ですが、あと一歩深みが欲しかった。
東大全共闘の話をもっと膨らませても良かったですし(この手の話を読む・観るのは割と好き)、ハードボイルドに磨きをかけてもっともっとハラハラする展開にしても良かったように思います。
自分は何となく本作の真相の一部は最初から予想出来ており、結局その通りだった訳ですが・・・。
ラストの所謂ラスボスと対峙するシーンは意外と冷静で、それがハードボイルドさとしての良さを際立てせている一方で何処か物足りなさも感じています。
結局は自分の無い物ねだりのせいで勝手に評価を落としているのは分かっています。
でも帯の文句に否応なしに期待値がどうしても高まってしまう。
これが無ければ、もしかしたら「素晴らしい!」と言って手放しに絶賛していたかも知れません。
ただ、ハードボイルドものとしては『長い別れ』にも匹敵するくらい魅力的な一冊だとは思います。
面白かったんです。
でもそれ以上を求めていたが故にこんなグダグタな感想になってしまいました。
(作品は悪くない)
『長い別れ』もそうですが、しばらくしたら読み返したい。
そんな一冊でした。
『テロリストのパラソル』
★★★★☆ / (4点)