読了してから少し間が空いてしまいました。
半年以上振りの館シリーズです。
前作の『人形館の殺人』は個人的には全くヒットしませんでしたが、『時計館の殺人』は前評判が高かったこともあり、元々読むつもりでした。
という訳で『十角館の殺人』と並びシリーズ最高とも言われている『時計館の殺人』です。
「シリーズ最高」なんて言われたら否が応でも期待しちゃう訳ですが、単刀直入に言いますが残念ながら期待値は超えませんでした。
トリックは確かによく考えてられているな~とは思うものの、予想の範疇というか、予想の亜種とでも言うべきか。
とにかく飽くまでも個人的な感想としては、奇抜さはイマイチで、これは『十角館の殺人』における「たった一行でおこるどんでん返し」の時と全く同じ気持ちでした。
正直、「トリックに全てが注がれている」と言っても差し支えないと思う両者なので、そこで肩透かしを喰らうとある意味絶望的です。
また、トリックはおかずでメインは物語なんだ、という風に感じるほどの物語の面白さでもなかったかなと。
確かに読みやすいし、あっという間に読めはします。
ただ自分的に致命的だなと思ったのは、登場の誰にも感情移入できず、また誰も好きになれなかったことです。
殊、担当役の島田潔(今作では別の名前ですが)がイマイチ好きになり切れず。
特に探偵役のミスリードはよくあることかも知れませんが、本作ではどうも納得いかず・・・まぁこれは個人的な感想に過ぎませんが。
あと、人が沢山殺されますが、『十角館の殺人』ほどの「怖さ」が感じられませんでした。
これは自分がミステリーに対する耐性が出来てしまったということでしょうか。
だとしたら寂しい・・・。
書評では「登場人物が多い」という指摘がありましたが、確かに多いかも。
でも分からなくなるほどではないですし、キャラ分けは自分の中では全然可能だったので、ここに関しては自分は気になりませんでした。
ただ確かに「館」ということに特化した作品としては過去最高峰だとも思います。
一番「館」としての特徴を物語とトリックに絡めているので、それ自体はお見事です。
ここに関しては読了後に振り返ってみると本当に凄いと思いました。
これは書評に同じ感想がありましたが、トリックそのものよりも過程と伏線、アイディアが面白かった。
緻密さはあると思います。
でも犯人はラッキーだとも思います。
総じて、
『時計館の殺人』くらい完成度の高い物語で『十角館の殺人』が描けていたら良かったかもな。
上下巻でしたが、長さが気にならない程には楽しめました。
という訳で人気の「館シリーズ」ですが、ここまでは『水車館の殺人』以外は特段好きではないものばかりです。
なのに印象的な作品ばかりなのも事実なんですよね。
記憶には残るインパクトは味わえるので、そこに面白さが付いてくることを願って次作にも挑みたいと思います。
・・・暫く先だとは思いますが。
『時計館の殺人』
★★★☆☆ / (3点)
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