本の帯に触発されて好奇心が掻き立てられるということはありませんか?
自分がこの作品を手に取ったのはまさにそういう理由です。
目当ての本が悉く置いてなく、何かしたら欲しかった時にそれほど厚くないしこれなら外れでも構わないか、くらいの気持ちで買いました。
ところでこれも前々から考えていることなのですが、ミステリーと一口に言っても範囲が広すぎますよね。
以前も書いたことがありますが、自分はミステリーと思って読んだつもりはなくてもミステリーの特集に組み込まれていたりと、ちょっとした謎解き要素があれば全てがミステリーのジャンルになってしまうようです。
ただから「本格」なんてジャンルが生まれたのは必然なのか、なんて妙に納得したことがあります。
ただ本作の場合はちょっと上記の話とはずれます。
何故なら本作の場合、帯に予め「ミステリー史上…」とか背表紙に「全ミステリーファン必読」とかいう文句が書いてあるからです。
出版社側で「これはミステリーですよ」と言って売っている訳ですから、それが誇大かどうかという問題は置いておいて、自らミステリーというジャンル身を置いている訳です。
何が言いたいかって、読み終わって思うに流石にその文句は詐欺だろうと。
少なくとも「全ミステリーファン必読」なんて文句は決して書いて欲しくなかった。
自称ミステリーファン、くらいのレベルの自分ですけど、こんなのミステリーじゃないでしょ、っていうのが自分の正直な感想です。
正確には「自分の読みたいミステリーじゃない」というワガママな言い方になるのでしょうが。
内容の前にそういう残念さが本作にはありました。
前置きが長くなりましたが、ミステリーかどうかはともかくとしてどんでん返しが起こる仕掛けが施された作品です。
似たような仕掛けが泡坂妻夫がやっていたような。
まず本作を語るに辺り、本作のテーマとなっているのが近頃よく聞く「ルッキズム」です。
本作の主役は容姿端麗な女性・香織で、その香織が容姿のせいで得ではなく散々苦労してきたという自分語りの方式で進んでいきますけど
最初はルッキズムに対する警鐘を鳴らすことがテーマの作品だと思ったのですが…。
いやルッキズムが一つのテーマであることは間違いありません。
実際どんでん返しが起きた後にもそういう警鐘はありますし。
この作品の大半は容姿のせいでかえって苦労してきたという希望の殆ど無い物語で占められています。
ただそれに深みがあるとか、思うところが出てくるとかは無かったですし、そもそも面白いと思わなかった。
ただただどんでん返しの一点だけのために用意された物語、という風に自分は感じました。
そのどんでん返しですが、ヒントから自分もある程度は読み取っていました。
ただそのメッセージには気づけませんでした。
でもそんなことどうでも良かったです。
「ああなる程ね」くらいの冷めた気付きでした。
こんなどんでん返しなく、いっそのこともっとルッキズムというテーマに特化した作品にして欲しかった。
とにかく出版社の売り文句が気に入らない、その印象だけしか残らない作品でした。
まぁその文句を見て買った自分は出版社の思う壺なんでしょうが。
かつ、面白く無かったのが致命的です。
基本的にはルッキズムが起点となって苦労し続ける女性の半生の話ですが、試練の連続で起伏なくて飽き気味でした。
それでも最後まで読んだのもどんでん返しがあると分かっていたからなのですが…。
紙の本でないと出来ない仕掛けというのは納得しました。
伝説級のトリックというのは流石に誇大広告だと思います。
外れてもいいやと思って買いましたが、違う作品を買えば良かったと後悔してます。
『逆転美人』
★☆☆☆☆ / (1点)