- 作者:F・W・クロフツ
- 発売日: 2013/11/21
- メディア: 文庫
前々から気になっていた古典物です。
しかし、感想が難しい本でした。
事件としては、港に着いた一つの樽から人間の手が出て来て、どうしたもんかとやり取りしている間にその樽が無くなり騒動になる、というスタートです。
そして、ここからこの樽を巡ってロンドンとパリ、そしてベルギーも交えて行ったり来たりの捜査になります。
今振り返って見ると、地道な捜査を繰り返し行う刑事たちと探偵の模様がひたすら続いていたという印象ですが、読んでる最中はそれほど退屈したということはありませんでした。
ただこんなにも地道な裏付け捜査を行っているのに、過信からか肝心な所で裏付けが取れていなかったり、そもそも裏付けが難しい状況が続いたりと一進一退を繰り返していくうちに、事件の時系列が複雑に思えてきました。
実際にはトリックも時系列も分かってしまえば差ほど複雑ではないのですが、そこは巧みな進め方で沼にハマっていきます。
こんなに地道な捜査がひたすら続く本はあまり読んだことがありませんでした。
正直フーダニットは殆どなく、あるのはハウダニットに絞って考える必要があります。
こうなると特に後半が自分には単調に思えてきたというのは否めません。
しかし、地道な捜査が続くというのは、極めて論理的に事件への解決が導かれるので、これも十分に本格派と言えるのでしょう。
物語としてはそこそこ面白く、特に前半はすらすらと読み進むことが出来ました。
何となくではありますが、ロンドンとパリの情景を思い浮かべながら読むのは楽しかったです。
ただ読み終えてみると、面白かった!というよりも長かった、というのが正直な感想で、古典物としては読んでおくべきとは思いますが、推理小説好きでなければ特にオススメできる一冊とは言い難い気がします。
ちなみに解説にて指摘のあった作中のミスについては全く気付いてなかった、というか忘れていました。
言われてみれば確かにその通りだなと。
ただまぁ、許容範囲内ではないでしょうか。
真剣に推理している人でも、これを言い訳にするのはちょっと弱いような・・・。
『樽』
★★★☆☆/3点