自分の好きだと言える数少ない作家の一人が朝井リョウです。
と言っても、『何者』でまだ5作目なんですが。
そして本作も読了してから時間が経ってしまいました・・・。
本作は戦後最年少での直木賞を受賞した作品・・・らしいです。
正直、ピンと来ないです。
自分は1年前程に読んだ『少女は卒業しない』が原作も映画も大好き過ぎて、本作はちょっと物足りないというか、自分の中で芯を外された気分です。
ただ、この作品の中盤まではSNSや就活のシステムに対する皮肉を描いているのかと思いきや、実は最後の最後でちょっとしたどんでん返しが起こり、作品のテーマが全く変わった事には驚きました。
本作は「新卒採用の就職活動に挑む学生たち」を描いた作品です。
自分の学生時代の就職活動を思い出しながら本作を読むと、共感できるところもあれば自分の至らなさ過ぎた所を痛感することもあります。
本作の登場人物たちの姿が等身大なのかどうかはよく分かりませんが、キャラクター造形は面白く感じました。
自分はSNSを覗くことはあっても、自分で発信しているものといったら精々このブログぐらいです。
『何者』では旧ツイッターで呟く学生たちの日常、そしてそれとは別に迫っている現実と言った対比が至る所で見られます。
ところが終盤である人物がついに本音をぶつけることで読者に見えてなかった現実が見えてくることになりますが、これが自分的にはスッキリしました。
現実を明かされた側は立ち直れないくらいの感じでしょうが、現実を突きつけた側は意外と自分の個性を理解していたんだな~というところで、すごく腑に落ちました。
そしてそれは次作『何様』でより納得できるようになっています。
『何様』の話は一旦置いておいて、『何者』で朝井リョウに突きつけられたメッセージには少しドキリとしました。
知らず知らずのうちに自分もそうなっていたかも、なんてことを思いました。
ただ、そのメッセージが自分の中に確かに刺さりはしたものの、深くはなかったです。
「桐島」や『少女は卒業しない』には自分の中で失われた憧憬に心揺さぶられるものがありましたが、本作のテーマ自体が自分の中では「だから何なの」という感じもしてしまうというか。
社会人に一度なってしまった身としては、そんなこと考えてる暇もないよ、って感じがします。
きっとこの作品の登場人物たちも、それぞれが進んだ道でそんな迷いすらも消え失せてしまうのだろうと自分は思いました。
映画も気になりますが、まだ観ていません。
次作『何様』も読了済みなので、それもいずれ感想書きます。
ただ『何様』はいつもの薄っぺらい内容を更に薄っぺらくしたものになりそうな予感・・・。