アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『災厄の町』 / エラリー・クイーン

 

いよいよライツヴィルシリーズに突入です。

突入なんですが、読了したのは1カ月半前くらいで、ちょっと消化する時間が欲しいと思っている内に記憶が薄れてきてしまいました。

 

さて、本作は読む前から評判の良い作品だということは知っていました。

人によっては最高傑作だと言っている方も居ました。

それを聞いて期待値は高まるのは必然なんですが、極力フラットな気持ちで読みたいと思っているので、出来るだけ先入観を持たないように気を付けました。

 

それで本作の率直な感想ですが、「アガサ・クリスティみたいな作風だな」という感想です。

なんというか、今までのクイーンのお話が「ミステリーのための物語」だとしたら、本作は「物語のためのミステリー」になっているような気がするんです。

パズル的な謎解き要素ではなく、登場人物たちが織り成す人間関係、生活の上に謎があるという印象で、まさしくクリスティのそれと同じ構成だなと若干感じました。

そして、その感じは既に読了済の次作でより強まることになります。

 

ということで物語としてはとても面白かったです。

ただ飽くまでも「物語に関しては」ということです。

はっきり言って謎解き部分に関しては本作には全く騙されることがありませんでした。

事件の状況、登場人物の行動や言動、透けて見える裏事情を鑑みると「これってどう考えても・・・」

謎が解けてしまったから面白くない、なんて事をいうつもりは毛頭ありませんし、自分も全ての謎解きが解けたわけではありません。

それこそ綾辻行人の『水車館の殺人』の巻末に書いてあった作者の言葉がこの場合も当てはまると思います。

ただ、自分は「ちょっと捻りが足りないのでは?」と思ってしまうのです。

登場人物は人間性豊かに描けている、ライツヴィルという架空の町を舞台に設定したことにはワクワクを感じる(杜王町的なね)、そしてしっかり人間ドラマがある。

ここまで揃っていて最後のピースが欠けてしまうという、まさに画竜点睛を欠く作品だと個人的には感じてしまいます。

 

作品としては面白かっただけに、どうしても残念に思ってしまうのです。

クリスティみたいな作品というだけであって、クリスティの作品では味わえない物語が本作には確実にあります。

それは、やっぱり舞台が架空の町とは言え、アメリカということが大きいような気がしています。

これはクイーンでなきゃ書けないでしょう。

それだけに、この作品が傑作だと言う気にはなれないんですよね・・・。

こんな事言ったら手前味噌になりますが、やっぱりクリスティの人間ドラマ×ミステリーの構成が成り立つのは凄いですね。

でも本作も面白かったんですよ。

というような反省点が、次作ではしっかり補えているような気がします。

次作では似たような作風の上でしっかり騙されましたから。

 

ということで、ライツヴィルシリーズはまだ始まったばかりです。

一旦町から離れたエラリーがどのように舞い戻ってくるのか楽しみです。

そういえば、本作のエラリーの偽名は『悪魔の報復』以上に酷いものだったな・・・。

 

 

 

『災厄の町』

★★★★☆  /  (4点)