てっきり「このミス」で一位を獲得しているものと勘違いしてたんですが、この年の大賞は『爆弾』だったんですね。
『爆弾』も最近文庫化されたものを書店で見かけて気になっている作品ではあります。
さて、そんな「このミス」にランクインしていた時からずっと文庫化したら絶対に読もうと決めていた作品です。
待望の文庫化で、偶然書店で見かけて久しぶりにテンションが上がりました。
ところで話は変わりますが、昨日のニュースで読書の秋とは言うものの急激な読書離れが進んでいるというような特集をやっておりました。
確かに本屋はどんどん潰れているし、周りにも読書が趣味ですなんて言う人殆どいません。
ニュースでもやっていましたが、今は気軽に動画や配信が楽しめる時代ですからね。
ただ、自分はそれだけが原因だと考えていません。
これだけ読書離れが進んでしまったのは、強烈な読書体験を与えてくれるような作品が減ってしまったからなのではないか、とも思うんです。
世間でいう話題の本だって、意外と大したことなかったりしますし。
翻って自分がこれだけミステリーに夢中になれているのは何故か考えてみると、やっぱり『オリエント急行の殺人』や『アクロイド殺し』を読んだ時の強烈な読書体験が忘れられないからです。
文字通り本の世界に引き込まれる様な強烈な、そして幸福な読書体験・・・。
あれが忘れられず、抜けきらない麻薬のように彷徨い求め続けている気がします。
しかしながら、あんな強烈な体験を味わえたのは、残念ながらあの時限りでした。
そして話を戻して『方舟』です。
この『方舟』には読書に、ミステリーに引きずり込まれる様な魅力が詰まっていると自分は思います。
人によっては自分にとっての『アクロイド殺し』になれるのでは?とすら思いました。
まず非常に読み易い。
講談社文庫の作品は大体が読み易い作りになっている気がします。
そして長くない。
読書を苦手とする人でも丁度良い長さだと思います。
雰囲気はちょっと物足りないかも。
閉鎖空間でタイムリミットが迫る極限状態のはずですが、緊張感はあまり感じられませんでした。
ただ、そんなの払拭されるような衝撃な結末があります。
この結末がハマらなければ、この作品の評価はただ下がりになるでしょう。
自分はハマった方なので、本作は好きです。
以前、Base Ball Bearのフロントマンである小出祐介がパーソナリティを務める「こんプロラジオ」で本作の特集?があって、少しだけ聞いてしまったことがありました。
その時の会話が「ラスト数ページが全て」というような事を言っていたので大分身構えていましたが、その身構えていた期待値を見事に超えてくれました。
解決編で自分が気になっていた違和感に触れられずどうなることかと思っていましたが・・・。
結局その違和感が重要だったんですね。
漫画版も手を出しましたが、とにかくラストが読みたいだけです。
マジでラストの描写だけが楽しみ。
巻末の有栖川有栖の解説も有難かった。
2週目を読むほどでは無かったので、解説で「ああ、なるほど!」となれたのは良かった。
細かいトリックとか謎解きは大したことないんですけどね。
読み終わって思うのは「殆ど裕哉が悪い」ってことですね。
ということで、楽しみにしていた甲斐があった作品でした。
話題の作品ですので、これでミステリー界隈がまた盛り上がると良いですね。
『方舟』
★★★★☆ / (4点)