『「ギロチン城」殺人事件』が読みたいと思っていたのですが、どうせならこの「城シリーズ」を一から読んでみようと思いまして本作に挑みました。
本作はメフィスト賞受賞作品でもあります。
ちなみに『「ギロチン城」殺人事件』の文庫が取り寄せ含め手に入らなかったので(中古はあるかも?)、「城シリーズ」は久々に電子書籍で読むことにしました。
いつもあらすじは書かないのですが、リンク先のあらすじを読んでもイマイチよく分からないと思います。
ざっくり頑張って書いてみます。
世界崩壊が間もない状況で少し特殊な能力を持った探偵であるミキがとある女性から依頼を受けて「クロック城」なる城に行くことになる訳ですが、世界の終焉を食い止めようと「真夜中の鍵」なるキーパーソンを探し求めるSEEMやら十一人委員会やらが争いつつ、ミキが訪れた「クロック城」では首なしの死体が見つかる不可能状態の殺人事件が起こるのであった…。
という、書いてるだけでもとんでもない内容の作品です。
でもちゃんと本格ミステリー要素もあります。
SF的な要素は後回しにするとして、本格ミステリー要素から。
館ミステリーと同じなんですが、3つの館の両端で大体同時刻に殺人事件が起こるのですが、真ん中の塔に居た人に気づかれずに行き来するのは不可能な状況で、それをどう可能にしたのか?あるいは犯人は複数なのか?抜け道があるのか?それとも他に何か方法があるのか?見落としは無いのか?
これらを追求するミステリーです。
です、というかそういう要素もあります、という感じです。
色々な要素がある本作の中でも、これがなかなか良く出来たミステリーで、この部分だけは本格ミステリーにも引けを取らないと思います。
ただし、このハウダニットの一点突破です。
例えばフーダニットに目を向けると一気に見劣りします。
あるいはホワイダニットに目を向けても見劣りします。
このハウダニットだけが素晴らしく、その他は本作のSF要素の一部に飲み込まれてしまい、消化不良な印象です。
このSF要素が賛否両論あるようです。
荒廃した世界で終焉が間もない世界。
その世界を救おうとする目的は一緒なのに、考えている手段が正反対で対立する組織。
他にも「ゲシュタルトの欠片」や「スキップマン」などな幽霊のような存在も現れます。
この辺りのSF要素に関する自分の正直な感想ですが、出来の悪いライトノベルを読まされているようでした。
自分はライトノベルに対する抵抗は無いですし、むしろライトノベルと言って侮るなかれと思っている方ですが、それでも本作の設定には最後まで馴染めませんでした。
馴染めないというか、ぶっちゃけてしまうと、これらの設定は最後まで全く回収されません。
投げっぱなしで終わります。
そういう作品は他にもあると思いますので、それでも良いのかも知れないです。
ですけど、自分には訳の分からなさだけが残って「何を読まされていたの?」という虚無感がありました。
メフィスト賞受賞作品ということで、なるほどメフィスト賞に相応しい要素の殆ど全てを兼ね備えている作品かも知れません。
自分はハウダニットにはひたすら肝心しましたので、本作に触れた意味は十二分にあったと考えています。
ただSF要素が邪魔だったというのも否めないかなというのが自分の意見です。
ミステリー好きとしては、全編本格風に仕上げて欲しかったかなと。
ただそう言いつつも、後半までは結構のめり込んで読んでましたけどね。
ライトノベルっぽい作品が苦手な人には難しいかなと。
ミステリー好きには読んで欲しいと思いつつも、ミステリー好きの方にも本作が受け入れられなかった人は多いようです。
万人向けとは思え無いですが、自分は一読の価値はあるかなと思います。
2度目はないかなとも思いますが。
『「クロック城」殺人事件』
★★★(★)☆ / (3.5点)