半年ほど前からクリスマスシーズンにはこの作品を読もうと決めていました。
正確には、本作の次の作品である『フロスト日和』が気になって調べたところ、シリーズ初作品は『クリスマスのフロスト』であることが分かり、どうせ読むならクリスマスシーズンまで取っておこうということで、まさにクリスマスシーズンのタイミングで読みました。
率直に感想を言えば、面白かったですね!
下品な主人公ということで、それだけでも新鮮味がありましたが、それ以外の点でも自分にとっては色々と斬新だと思える設定や物語の構成があって、とても面白かったです。
主人公は下品でだらしがない、しかも上司からは嫌われている、でも階級は警部という面白い設定のフロストです。
このフロストが上司には嫌われていますが署内、あるいは署外には人望もあるというなかなか面白い立ち位置です。
そしてその相棒役になる、刑事に昇進したばかりで伯父が警察長という経歴のクライヴですが、このクライヴがなかなか良いアクセントになっていると思いました。
伯父が警察長ということで周りからは色眼鏡で見られるクライヴですが、自分は実力でのし上がったのだという自信家で、出世欲もある大型新人?です。
でも実際には、本作の中では失敗が目立つクライヴですが、その癖上司にあたるフロストの事を「ロンドンだったら通用しない」や「間抜け」「役立たず」等と評価しており、一貫してこき下ろしています。
面白いのが、普通だったらこういう評価が覆り、フロストの事を見直して身の程をわきまえる展開を想像すると思うんですが、ちょっとネタバレですが実はそうはならないという所。
クライヴが気づいてない、フロストが切れ者であるという描写は幾つも描かれており、読者側からすればクライヴの方が「間抜け」に思えるのですが、フロストも人間らしい失敗を幾つも犯します。
その人間臭い展開や描写が自分は大好きでした。
クライヴが最後の最後でフロストに対する評価を改めたのかどうか、という所までは描かれてない事が、逆に良かったですね。
次作には出てこないようで、残念です。
他にもフロストの事を認めていないマレット所長やアレン警部など、対比で置かれると面白い存在が出てきます。
物語の展開も結構面白くて、基本的にはフロストがだらしない一面と鋭い一面が交互に描かれているような印象ですが・・・。
最後の最後が面白いんですよね。
結局フロストは事件の裏までは推理出来ませんでしたが、事件は解決します。
その事件の真相が思った以上に緻密に出来ていて、これまた面白かった。
「なるほど!言われてみればそういう考えになるよね!」という感じで、推理小説としても楽しめました。
ということで登場人物の設定も物語の展開も事件の解決も、全てが自分にとっては新鮮でとても面白かったです。
ありそうでこういう感じなかったかも?という意表を突かれたような気もします。
ただ『ポアロのクリスマス』もそうですが、クリスマスに読むのには相応しくないかも知れません。
飽くまでも推理小説ですからね。
ということで次作『フロスト日和』も期待しております!
『クリスマスのフロスト』
★★★★★ / (5点)