アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『シャーロック・ホームズの復活』 / アーサー・コナン・ドイル

 

昨年からホームズシリーズを読み返し始めましたが、一番の読みたかったのは実は本作。

 

前作の『回想』が個人的にはイマイチな印象だったので、本作はどうだろうかと不安があったのですが、そんなものは一掃される程の面白さでした。

『回想』の最後に収録されていた「最後の事件」から約3年を経てのホームズの復活が描かれた「空屋の冒険」。

お馴染み?モラン大佐がホームズの命を狙います。

ここで語られるホームズの「最後の事件」におけるライヘンバッハの滝での模様が読んでいてもイマイチ情景として捉えられない私でした。

この話を読むまで覚えてなかったのですが、ワトソンは独り身になっていたのですね。

この辺りも含めてヘイスティングスと被る所がありますね。

 

その他に特に気に入った話だけ取り上げることにします。

 

・「ノーウッドの建築業者」

この話で特に印象的なのは、レストレード警部とホームズの意地の張り合いとも言うべくやり取りです。

珍しくホームズが警察側の立証に負けそうになり、自信満々のレストレード警部と自信のないホームズという今までにない構図になります。

そこからその構図が反転するところが実に爽快でした。

レストレード警部の

「負けて悔しいのは、あなたもわれわれ凡百の男どもと変わらないらしい」

という台詞が印象に残っています。

 

・「踊る人形」

これが特に読み返したかった話です。

解説にもありますがポーの「黄金虫」に似て非なる暗号がキーになる物語です。

暗号ものといえばミステリーの定番ですが、思い返してみると意外と暗号ものって定番という程読んでないなぁという気がします。

推理ゲームとかではよくありましたけどね。

ただ何度読んでもこの暗号解読方法が自分には実践出来ません。

それよりも悲劇的な物語ということで、物語が評価されるべき話のような気がします。

大体推理小説の定番として、何故か自分の秘密を牡蠣のように口を閉ざして語らない人には不幸な結末が用意されますよね。

本作では「アビー荘園」も似たような展開に。

 

・「ひとりきりの自転車乗り」

もう冒頭4つが「特に印象的」というところで、本当に取捨選択する気あるの?って感じですよね。

いや、どれも面白いんですよ本作。

でも本作はやっぱり印象的でしたね。

自転車で追いかけてくる謎の男の姿を自分の中で思い描いていたんですが、その造形は何故か名探偵コナンに出てくるコルンでした。

そんな与太話は置いておいて、悪人が女性に心を奪われて善人に転ずるという展開は時々ありますが、それが上手く描けたお話だったと思います。

 

・「ブラック・ピーター」

冒頭の描写がまず印象的ですが、それに繋がるホームズの台詞で

「ぼくにはその説、ひとつだけ難点があるように思えるんだがね、ホプキンズ。なにかと言えば、つまり、その節は本質的に成りたたないということだよ。」

という台詞が本作で一番印象的です。

この台詞は名探偵ならではのものだと思います。

ホームズの別の名言で「あらゆる可能性を排除していって最後に残ったものが、どんなにあり得ないものでも真実である」という台詞と並ぶ名言だと勝手に思っています。

事実だけを表面的に、理路整然となぞるのでは無く、核心をえぐる様な推理を展開するのが名探偵だと思いますし、そういう様子を観たいですね。

 

・「恐喝王ミルヴァートン」

この話は否が応でも印象に残るのではないでしょうか。

ホームズが義賊さながらの行動に出る話です。

なかなか恐ろしい敵でした。

以前読んだ横溝正史の『迷路の花嫁』と似た敵ですね。

 

・「三人の学生」

ホームズシリーズにはあまり無い日常の謎に迫った話ですが、解決方法がまさにホームズという感じで好きでした。

 

・「スリークォーターの失踪」

この話が印象的だったのはラグビーの話が出てきたから。

やっぱりイギリスのスポーツと言えばサッカー、クリケットラグビーのイメージがあります。

自分は競馬をやらないのでイメージにはないですが、ホームズではイギリスでも人気な競馬の話もありましたね。

ホームズがそんな国民的スポーツに関する情報はからっきしだったのが、処女作『緋色の研究』を彷彿させました。

 

・「第二の血痕」

解説にもありますが、ポーの「盗まれた手紙」に似てますよね。

どちらに軍配をあげるかと問われれば、自分はポーにあげますね。

ただホームズに度々出てくるこういう政治絡みの話は緊張感があって好きです。

 

ということで殆どの話を取り上げることに。

『冒険』に勝るとも劣らないほど面白い作品でした。

流石に『冒険』には劣るか。

ただ本作は自分好みの作品だったのかなという気はしています。

当時アメリカやイギリス国民が待ち望んだ本作ですが、自分もその熱気を味わってみたかったな~。

古典とは言え名作ですから、時代を超えてフレッシュな超絶面白さが味わえます。

ロマンが味わえるという点ではシャーロキアンの気持ちも分かります。

推理小説本来の楽しさが味わえる素晴らしい一冊でした。

 

 

 

 

シャーロック・ホームズの復活』

★★★★★  /  (5点)