アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『流星の絆』 / 東野圭吾

昨年の最後に読んだ本が東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇蹟』でした。

それが個人的には大好きな作品だったので、それなら今年の年末も東野圭吾を読もうかなと考えました。

ただし、この作品が締めになるかは分かりません。

一つ言えるのは、自分の中では東野圭吾のミステリーはそれほど注目していた分けでは無かった筈なのに、今ではあれもこれも読みたいと思ってしまうくらいの魅力を著者の作品に感じているということです。

 

ということで、年末に東野圭吾を読もうと考えたときにパッと思い浮かんだのが『流星の絆』です。

この作品、ドラマ化していて自分も嵐の曲が頭の中で再生されます。

でも実は自分はそのドラマを殆ど観てないんですよね。

「殆ど」と言うのは、実は何故かドラマのラストシーンだけを観ていて、それ強烈に印象に残ってるんですよね。

どの部分かと言えば、犯人が特定される、犯人のとある「行動」についての場面。

なので、自分はドラマと同じ運びならば犯人はコイツだ、ということが分かった上で読んだということになります。

白夜行』を読んだ時はドラマの冒頭シーンだけを観たことがあって、そのイメージを持って作品に臨みました。

流星の絆』はその逆ですね。

 

さて、その対比に出させてもらった『白夜行』について先に触れておこうと思います。

自分は本作を読んでいる最中に『白夜行』の内容が何度も過りました。

特に『流星の絆』の主要人物の一人である功一と『白夜行』の亮司がダブって見えることが多々あったんですよね。

ただし、「行動」の部分で似通っているところはありましたが、「動機」の部分では大きく異なります。

闇金ウシジマくんみたいな事を功一は言っていますが、自分から人を騙すのはこれで最後にすると自分から言ったり、亮司とは違って悪の道から外れることが出来るような人間関係と運に恵まれています。

自分が考える亮司の場合は、悪の道に進むことを良しとしてる訳ではなく、人間らしい幸福を手にしかけた事もあったのに、結局は運命の悪戯に翻弄されそれを手放すことになり、ひたすら埋め合わせをし続けなくてはならない人生を送ることになります。

だから、『流星の絆』の功一は運と人間関係に恵まれた『白夜行』の亮司なんじゃないか。

そんな視点で自分は本作を読んでしまいました。

ただし、『白夜行』の二人はもっともっと過酷な運命だったと思いますし、だからこその重厚感が感じられたという差は大きいですが。

 

そんな圧倒的な『白夜行』と比較してしまうと本作は物足りなく感じてしまうのは否めません。

ただし、それは圧倒的だった『白夜行』と比較してしまうからに過ぎません。

本作も十分に面白かったです。

途中「ちょっと都合良すぎでは?」と思う展開はあったものの、【ハヤシライス】というアイテムから物語が動いていく様子はとても良かったです。

登場人物たちの性格や心の揺れが展開とマッチしていて、また騙す相手と騙される相手の心情的なやり取りはついつい引き込まれてしまいました。

そして、何よりあの素敵すぎるラスト。

どうやったらこんな着地思い浮かぶんだろう。

やっぱり天才としか思えない。

 

惜しむとすれば、子供時代の話をもう少し描いてこの兄妹の苦労がもっと分かりやすくなったら良かったということと、両親(特に母親)の話がちょっと少ないかなということですね。

ただ、それナシでも600ページ超えの本作ですので、蛇足として切り取られてもしかたないといえばそうなのかも。

でも、600ページと感じさせないくらい面白かったので、700ページくらいになっても全然良かったと個人的には思います。

 

ミステリーとしては・・・どうなんだろう。

繰り返しになりますが自分は犯人が誰か分かった上で読んでいたので、散りばめられたヒントには気づいていました。

ただ謎解き重視の作品では無いと思いますし、それだと本作を楽しめないかなとも思います。

後半はミステリーっぽい展開になっていますが、やっぱり本作は物語としての展開を楽しむ作品だと思いますね。

あと、ミステリーとして自分が一つだけ微妙かもと思ってしまうのが犯人の動機です。

「そういう事情があったとして、殺しに走るかな・・・」と若干思ってしまいます。

まぁこんなケチは言い出したらキリがないですし、取るに足らないものですね。

飽くまで舞台を眺めてる冷静な観客側の視点と感想でしか無いですし、自分がその舞台上の人物になったら考えも行動も変わるかも知れないですしね。

これは本作に限らずですが。

とは言え、そんなこと言ってたら正直な感想も書けない訳ですが。

 

ということで、年末に読むに相応しい心が満たされるような作品でした。

結局人間って感情で動くよね、っていうことが素敵に描かれていた気がします。

そして自分の場合はつい『白夜行』と対比してしまうことで、違う角度から本作を楽しめたような気もします。

そういう意味では、『白夜行』の偉大さを再認識した作品でもあったかも知れません。

 

白夜行』もまだ観てないけど、『流星の絆』のドラマから観てみようかな~。

 

 

流星の絆

★★★★☆ / (4点)