またもや読了順とは異なりますが、記憶が鮮明のうちにこちらの作品を。
書店で平積みされているのが目に留まって買った一冊です。
恩田陸のミステリー作品を読むのは初めてだと思います。
子供の頃放映していた少年ドラマシリーズ『六番目の小夜子』は大好きでしたけどね。
巻末にはっきり書かれていますが、舞台は金沢です。
作中ではK市と表記されていますが。
自分がこの作品を買ったのは昨年末頃でしたので、その時にはまさかこんな事が起こるなんて予想だにしておりませんでした・・・。
さて、本作はK市で起こった第2の帝銀事件とも呼ばれる一家大量毒殺事件を軸に話が進んで行きます。
インタビュー形式で会話が進んで行き、インタビュアーが誰なのかははっきりと分かりませんが、各章の語り部はインタビューを受けている毒殺事件に関連した人物たちです。
偶然ですが、今読んでいる本も同じような造りで驚きました。
様々な人たちの独白から次第に内容が浮き彫りになってくる感じは東野圭吾『白夜行』にも似通っているように思います。
そして、何が事実で何が虚構なのか・・・そして何が真実なのかがはっきりしないので、読み手側の想像力を搔き立てられる感じも『白夜行』に似ている気がします。
作中で毒殺事件の事をインタビューし一冊の本にした満喜子という人物が出てきます。
その満喜子が終盤で「正しい鑑賞者になりたかった」というような事を述べます。
その満喜子の願望が自分にはよく分かる気がします。
しかしながら、皮肉なことに本作の中で起きた大量毒殺事件を起点とした様々な出来事を正しく鑑賞することは最早不可能なように思われます。
本作を正しく鑑賞しようとすればするほど迷路のような精神世界に取り込まれる様な感覚になります。
そういう意味では、本作は夢野久作『ドグラ・マグラ』にも通ずるものがある気がしています。
色々と解説を読んでも、絶対に辻褄が合わない事実が出てくる。
回収されない疑問が残る。
そして自分が各人物を正しく鑑賞出来ているのか分からなくなってくる。
ついに堂々巡りです。
想像は掻き立てられますが、『白夜行』ほど自分の中で深く刺さるものはありませんでした。
でも、想像を掻き立てられるという事自体が楽しい読書体験でありました。
特に「一体真犯人は誰なのか?」という問いの辿り着く先を想像する事が。
そういう意味では、最終章の印象が特に色濃く残る作品でした。
『ユージニア』
★★★★☆ / (4点)