エラリー・クイーンの作品はバーナビー・ロス名義で出した悲劇四部作しかまだ読んだことがありませんでした。
いずれは国名シリーズも絶対読むとは決めていましたが、このタイミングとなりました。
ということで、エラリー・クイーンの栄えあるデビュー作にして国名シリーズの第一作目の『ローマ帽子の謎』です。
事件は上演中の劇場内で起こります。
ある男が殺されるのですが、その男の服装から考えると当然あるはずのシルクハットが現場に見当たらない・・・。
果たして帽子の行方とそもそも何故無いのか。
ここから最後まで帽子を中心として、殺人の推理と探求が繰り広げられていきます。
エラリー・クイーンの作品も論理的でパズラー要素があるイメージを勝手に持っていましたが、今作でもそういった推理の展開はあるにはあるのですがそこまで論理的な展開では無かったかなと思います。
登場人物が多いので苦労するかと思っていましたが、それも杞憂に終わりました。
そもそもの話になりますが、まずエラリー・クイーンという名前がペンネームと作中の探偵で同じになっているというのは知っていましたが、作中の探偵の方は本名は別にあるというのを知って驚きました。
ただ、巻末のあとがきにある有栖川先生の話だと、この作品で語られているエラリーの設定は後々なかったことになっているとか・・・。
帽子の行方は論理的にエラリーによって解決されますし、犯人についてもそうだと言えます。
ただ所謂「読者への挑戦」の段階で犯人とトリックをズバリ当てるのは不可能に近いのでは・・・と思います。
自分は直観で犯人は当てたんですが(それは当てたとはいわないか?)、全く違う動機を想像していました。
というか、動機に関しては途中から推測は出来ますが、それはよく考えてみればどの人物にも可能性があるものになっています。
一応動機が露骨に表れる人物が何人か出てきますが・・・。
その他にも帽子のどうやって劇場から消えたのか、ということに関してリチャード・クイーンはそのことに言及していたが・・・ということを述べますが、何度その場面を読んでもそんな描写が見当たらない。
そして自分が一番引っかかっていたのは凶器についてなんですが、これも「あのヒントだけでそこまで辿り着けと・・・?」というようなものだと最初は思ったんですが、でもよくよく考えてみると後にも先にもこの凶器に使用された物に分類される話をしているのはこの場面だけなんですよね。
これに関しては、その時点でピンと来なかった自分がダメだったかも知れません。
自分が推理できたかどうか、というのは置いておいて・・・。
最後にエラリー達が推理した内容が一気に述べられていきますが、それほどの感動は味わえませんでした。
全体的にお話としてもそれほど面白いとも思えず、かといってつまらないという程でもない・・・。
何というか、のめり込むことなく終了してしまったというのが正直な感想です。
ただなるほど、論理的に話は進んでいきますし、有栖川先生によれば『ローマ帽子の謎』はまだ甘いということだったので、この先の国名シリーズも変わらず楽しみにしています!
最後に巻末のあとがきの話ですが、あとがきの話は面白かったです。
あとがきはエラリー・クイーンの影響を多大に受けていることが初心者の自分からでもよく分かる有栖川有栖先生です。
有栖川先生曰く、日本国内での本格ミステリーの三大巨匠はディクスン・カー、アガサ・クリスティ、そしてエラリー・クイーンということになるそうです。
三者の持ち味は異なり、それは以下の通りに分類出来そうだということ。
・ディクスン・カー ⇒ トリック派(密室物などのトリックで惹きつける)
・アガサ・クリスティ ⇒ プロット派(誤導の冴えに定評あり)
・エラリー・クイーン ⇒ ロジック派(フーダニットの難題をつきつける)
ということになるのだそう。
自分はカーだけはまだ一つも読んでいないのですが(メチャクチャ楽しみにしてます)、この分類は面白いですね!
クリスティに関しては完全に納得です。
そして有栖川先生はこんなことも述べています。
「風俗描写には古色が漂い(それが魅力に転じている)」。
自分もそう思います。
『ローマ帽子の謎』でもそれだけは最初から最後まで魅力的でした。
色々書きましたが、始まりの作品としては十分だったのかと思う一冊でした。
少なくとも当時の作者の若さでこれを書き上げたのは凄すぎる・・・。
この先の作品はもっともっと面白いものになっていると思いますので、先が楽しみです!
『ローマ帽子の謎』
★★★☆☆ / (3点)