この『ゼロ時間へ』を読むためにバトル警視ものを全て読もうと決めて、『チムニーズ館の秘密』、『七つの時計』、『殺人は容易だ』と読んできました。
(『ひらいたトランプ』は大分前に読んでいました)
そしてついにこの「ゼロ時間」に到達しました。
名作と言われるだけあり、とても面白かったです。
冒頭で語れる「ゼロ時間」の意味、そして物語が始まり事件が起きる。
明らかに怪しい容疑者と状況、その中で推理を進めるバトル警視、そして最終的に「ゼロ時間」へと到達する。
この流れはお見事としか言いようがありません。
物語の面白さ、流れとしてほぼ完璧なプロットだったと思います。
この作品でも、まんまとクリスティのミスディレクションにやられました。
簡単に見抜ける事実の裏に巧みに別の真実を隠して読者の目を逸らすやり方は、本当にお見事だと思います。
パズル的なトリックではない分複雑ではなく、分かった瞬間に「やられた!」と思える衝撃がたまりません。
真実が分かってから振り返ってみると、今回の事件を正しく解決するための推理法はポアロから学んだことを駆使するべきでした。
そのポアロの話が出てくるのも嬉しかったです。
バトル警視も言っていた通り、この事件はポアロ向きの事件と言えるでしょう。
ただ今回の犯人は殆ど完全犯罪を成し遂げていますよね。
そして物語中盤で起きる最初の事件については、ちょっとツッコミどころがあるような・・・。
でも頭の良い巧妙な犯罪だったのは間違いないでしょう。
事件のトリックが優れている、というよりも物語としての面白さが抜群だったというのが本作の高評価の理由のような気がします。
「ゼロ時間へ」のタイトルも秀逸で、そのタイトルに見合った結末に至るのもすごく良かったです。
もう一度読んでも面白いだろうなと思える、秀逸な一冊でした。
バトル警視物としてはこれが最後の作品のようです。
登場作品の中で比較すれば、自分はやっぱり『ひらいたトランプ』が一番好きかなぁ。
ただ、あれはポアロ物ですからね。
それ以外で比較すれば、自分は意外と『チムニーズ館の秘密』が好きだったり。
あの時点での評価は4点でしたが、読後も後をひく面白さがありました。
もしかすると、この『ゼロ時間へ』もそうなるかも知れません。
それと、バトル警視が一番活躍したのは案外『七つの時計』かも知れませんね。
『ゼロ時間へ』・・・事前に聞いていた評価通り、とても面白い一冊でした!
『ゼロ時間へ』
★★★★★ / (5点)