アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『ハロウィーン・パーティ』 / アガサ・クリスティ (再読)

 

 

 

来月だったと思いますが、ケネス・ブラナーポアロ物の新作映画が公開されるということをつい先日知りました。

何と次回作は『ハロウィーン・パーティ』を題材にした映画のようです。

自分はケネス・ブラナー主演のポアロ映画は『オリエント急行殺人事件』も『ナイル殺人事件』も観ていますが、正直どちらもあまり好きではありません。

オリエント急行は74年公開の映画版も観ていますが、それもあまり好きではありません。

ナイル殺人事件の方も78年公開の映画版を観ましたが、こちらは好きでした。

オリエント急行は思い入れが強いので映像化は受け入れられないかも知れませんが、ドラマ版は観てみたいと思ってはいます。

ケネス・ブラナーのナイルに関しては脚色が余計だったような。

 

と文句を言いつつも、来月公開の映画も観るつもりです。

映画の事もあるんですが、この『ハロウィーン・パーティ』は再読したいと思っていた作品の一つです。

ポアロ物で読み返したい作品は沢山ありますが、本作に関して言えば、情景は思い出せるのに内容は殆ど思い出せない、という理由がありました。

長編ポアロ物は数冊の例外を除いて順番に読んでますので、長編33作中31番目の本作は後の方に読んだはずなのですが、内容はおろか自分の本作に対する印象や感想も覚えていません。

という事もあり、映画公開は良いきっかけだったので読み返すことにしました。

 

何故か事件と事件が起きるまでの情景はよく覚えていました。

ハロウィーンパーティーの最中で起きる事件ということと、『葬儀を終えて』と似たような発端、これらが印象を強めたのかも知れないです。

(でもオリヴァ夫人が出ていた事は忘れました)

そこからは犯人も展開も全く覚えていません。

だからこそ、なかなか楽しめました。

読みやすい、そこそこ面白い、ポアロポアロらしい。

展開は二転三転したりする訳ではないので解説にもある通り派手な仕掛けはないですが、手堅い感じがします。

ある意味これが円熟味なのかも知れません。

ただ本作は子供が多く登場するせいか、登場人物の色分けはあまり上手くいっていない印象があります。

主要人物だけに限ればそれほど多くはないので問題ないですが、キャラの特色が薄いので印象は弱いかも。

というか、31作目ともなればそれも納得ですが。

 

事件的にもハロウィーンパーティー中というコトを除いてしまうと特徴は無いかも知れません。

故に、これは初見でも犯人の目星は簡単に付くのではないでしょうか。

自分もそうでした。

(あるいはクリスティ作品に慣れた人なら、と言った方が良いのかも)

ただし、その人が何故?

あるいは本作に散りばめられた謎の何故?

についてを全て突破するのはなかなか難しいかも知れません。

ある程度読み進めるとポアロがヒントをくれるので、それを貰えれば突破出来ると思います。

ただノーヒントで気付くのは結構難しいのでは。

それくらいさり気ない記述にヒントは隠されています。

 

巻末の解説では自分の思っている通りのクリスティの魅力について書かれていました。

長谷部史親氏が、

だが、クリスティーのミステリ作品の人気は、独創的なアイデアや緻密な推理ばかりによって支えられてきたわけではなかった。むしろ人間関係の綾をまじえた総合的な小説づくりの巧さが、クリスティーの魅力の厳選のような気がする。

と述べています。

まさに自分が思っていた事をしっかり言葉にしてくれています。

勿論緻密な推理や独創的なアイデアに富んだ作品もあることは知っています。

しかしそういった作品を含めたとしても、クリスティの作品の魅力はこの長谷部氏が述べた部分が主な物であり、アイデアや緻密な推理等はそれを彩る装飾のような存在のような気がします。

少なくとも自分はそう感じています。

そういう意味では、本作もクリスティの魅力が味わえる作品だと思います。

 

まとめますと、突き抜けた面白さはないが安定感のあるクリスティらしい面白さは味わえる作品だと思います。

これも解説に述べられていた事ですが、本作の後に出たポアロ作品が『象は忘れない』とラストを飾る『カーテン』であると言う事を念頭に置いて読むと、一層面白いかも知れません。

自分も読了後にそれを念頭に置いて本作を回想してみると、確かに感慨深いものがありました。

また余談ですが、本作中には過去作品である『マギンティ夫人は死んだ』と『鳩のなかの猫』に言及される場面があります。

それも面白かったです。

ただ、自分は『鳩のなかの猫』はよく覚えているのですが、『マギンティ夫人は死んだ』については全く内容を覚えていません。

それを踏まえて本作を読むと、『マギンティ夫人は死んだ』について回想する場面はちょっとネタバレになってるのかも。

内容を覚えてないので何とも言えませんが…。

『鳩のなかの猫』は大丈夫です。

『鳩のなかの猫』は面白かったし好きだけど、『マギンティ夫人は死んだ』は感想も覚えていないので(なんとなくですが、あまり面白くなかったような…)、『ハロウィーン・パーティ』以上に覚えていません。

ただ『マギンティ夫人は死んだ』については再読したいとは思ってなかったんですが、本作に話が出てきたので再読してみようかしら。

余談でした。

 

という事で最初の話に戻りますが、来月の映画は観たいと思っています。

映画はともかく、それがきっかけに本作を読み直せたのは良かったです。

なかなかクリスティの未読の作品には手を出していませんが、既読の作品でもまだまだ読みたいものはあるので、機会があればまた読んでいきたいと思います。