こちらの作品は色々なタイトルが冠付けられていたようですね。
最新がどれなのかよく分かりませんが、他にも『許されざる結婚』ですとか『処女の跡取り娘』などが日本語訳のタイトルとしてあるようです(wikipediaより)。
原題は「The Dragon's Teeth」のようですが、改題されて「The Virgin Heiress」になったとか。
その割には『ドラゴンの歯』のタイトルの方しか電子書籍には見当たりませんでした。
中古の紙媒体では『許されざる結婚』の方が安価で手に入りそうではありましたが、流通が多そうなのは『ドラゴンの歯』の方でした。
個人的には『許されざる結婚』の方が内容には即しているような気がします。
ということで一応これもハリウッドシリーズということになるのでしょう。
『悪魔の報復』『ハートの4』に続く、シリーズ第三弾ですね。
と言っても本作にはハリウッドのシーンはほんの少ししか出てきません。
ブッチャーの名前も本作では全く出てきません。
舞台は殆どがニューヨークですので、ハリウッドシリーズと括るのもどうかな・・・。
そんなことはともかく、このハリウッドシリーズ(一応シリーズとします)ではお馴染みの「ロマンス」がまたまた物語を動かしています。
本作のあらすじをアマゾンの紹介文から少し補足すると、ヒロインのケリーがある日突然巨大な富を相続する権利を得ます。
しかし、相続するのには条件がありました。
それは1年間指定の場所で暮らすことと、生涯結婚してはならないということでした。
女性としての幸せを捨てて巨大な富を得る決心をするケリーでしたが・・・。
こういう状況でのあれやこれやが起こるのが本作であり、その上にロマンスが重なってきます。
ただそのロマンスの描き方もシリーズを追うごとに上達しているような感じが個人的にはしています。
『悪魔の報復』は個人的には好みの作品でしたが、ロマンスの描き方はちょっとイマイチだったような気がしますし(まぁそれが物語を面白くもしていましたが)、『ハートの4』では仕方ないとは言えひたすらブッチャーが可哀想という思いでしたし、エラリーのロマンスは余計だったと感じています。
そして本作『ドラゴンの歯』ではエラリーは物語の終盤までは脇役で、終盤までの物語の主人公はボー・ランメルが務めます。
このボーがお馴染み?ハリウッドで出会うのがヒロインのケリー・ショーンです。
ボーもケリーも、主役とヒロインとしてはこのシリーズで一番好きなカップルでした。
まずヒステリックになることが殆ど無い(全くではない)。
特にケリーは途中自分の命が狙われる場面も出てきますが、冷静に回避したり、立場が悪くなって追い詰められても落ち着いた様子があってグッドでした。
ボーも優秀な事はよく分かりましたが、もう少し上手く立ち回れなかったものか・・・。
そして終盤ではエラリーが大活躍します。
解決は十分ロジカルに見えました。
ただ犯人側の足搔きが個人的には無駄にしか見えませんでしたが。
しかも意外な犯人という訳でもなく、「やっぱりね」という感じでした。
そういう意味では、物語としては結構面白くてすんなり読めましたが、ミステリーとしては物足りない作品でしたね。
ヒロインが追い詰められる構図というのも、悪くはないですけど本作には緊迫感がちょっと足りなかったような気がします。
『中途の家』とかもっと凄かったですからね。
ただ、自分はハリウッドシリーズも全然嫌いじゃなく、むしろ3作とも好きです。
下手な国名シリーズ(どれとは言わない)なんかよりもずっと面白かったです。
これは国名シリーズの時よく思っていたことですが、キャラクターの色付けが下手で登場人物が記号化してしまっているのが否めなく、ミステリーとしては面白くても物語として入り込めないという印象が度々ありました。
ただ国名シリーズの中にはミステリーとしての完成度が高く、物語の薄さを補って有り余るほどの出来だったので、それはそれで面白いとも思っていました。
そのバランスが最も上手くいっていたと感じるのが『中途の家』でした。
ですが、ハリウッドシリーズ3作は国名シリーズの時に感じていた事とは真逆で、ミステリーとしてはイマイチでも物語としては面白かったです。
そしてどちらかと言えば、自分は物語に重きが置かれている方が好みな気がするので、本シリーズは肌に合っていた気がしています。
ということで、ハリウッドシリーズはこれにて終了。
さあさあ、いよいよ次からは<ライツヴィルシリーズ>です!!
その間に短編を読むかもしれませんが、いずれにしても物凄く楽しみです。
『ドラゴンの歯』
★★★(★)☆ / 3.5点