アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』 / アガサ・クリスティ

 

久々の更新となってしまいました。

今回取り上げる『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』は元々気になっていた作品だったのですが、BSプレミアムでドラマが放映するということでそれに合わせて読むつもりが、結局ドラマにも間に合わなければドラマも全く観ず。

 

さて本作ですが、今回が初読になります。

自分の印象では評価が高い作品の一つだったので、先にも述べた通り気になってはいたんですよね。

ドラマ化のニュースが良いきっかけになりました。

結局観てないけど。

 

本作は1934年刊行ということで、あの「オリエント急行」と同じ年、「オリエント急行」の次の作品になるんですね。

wikiで見ると1934年は「オリエント急行」、「エヴァンズ」、『三幕の殺人』と刊行しているらしく、物凄い年ですね。

なんなら前年の1933年からの「エッジウェア卿」⇒「オリエント急行」⇒「エヴァンズ」⇒『三幕の殺人』の流れは強すぎる。

 

ということでもうお分かりだと思いますが、本作『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』もとても面白かったです!

本作はボビイという青年とフランシス(フランキー)という令嬢のダブル主人公で進んで行きます。

ふとしたきっかけ、ふとした一言から物語が膨らむという物語はクリスティの作品でも幾つもあると思いますが、本作もまさにその一つです。

冒頭のゴルフのシーンはほのぼのしてて好きでした。

日本のゴルフ場とはまた違った雰囲気で、良いな~としみじみ思いました。

そんなゴルフ場で発見された、不運な転落事故にあってしまった謎の男性。

そして主人公ボビイが付き添っている際に、その謎の男性の今際の言葉が「なぜ、エバンズに頼まなかったのか?」でした。

この言葉と謎の男性が持っていた写真、そしてフランキーの想像力とボビイの身に迫る危険・・・。

2人は謎の男性の正体とその裏に何が隠されているのかを探るべく行動を開始します。

 

クリスティの作品にしては長い方だとは思いますが、無駄はあまり感じません。

一進一退を繰り返しながらも、しっかり起承転結が完結している気がします。

ボビイもフランキーも素人とは思えない情報収集能力で様々な情報を入手し、これまた素人とは思えない行動力で色々なアクションを試みます。

特にボビイに関しては冒頭の日常シーンでは「この主人公で大丈夫なのか?」という印象が少なからずあったのですが、フランキーと行動を起こしてからは別人かと思えるような行動力と想像力があって、飛び出しがちなフランキーを制止したりと良いコンビになっていました。

 

また起承転結がしっかりしている事もそうなんですが、本作は始まりと終わりが繋がっている感じがする所も好きです。

物語が輪っかになっているというか。

これもwikiの引用ですが、

米版のタイトルは「ブーメランの手がかり」という意味の The Boomerang Clue だが、ダイイング・メッセージを起点として一進一退を繰り返すストーリー展開を表しており、作品中にブーメランは登場しない。

ということで、これはまさしく自分が感じている事と同じことを表しているような気がします。

ちなみにwikiに書かれている<あらすじ>は結末までしっかり書かれていますので要注意で。

 

「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」という一言から始まり、「何故そのような発言を?」「何を頼まなかったのか?」「そもそもエヴァンズとは何者なのか?」という疑問が次々に生じ、でも最後までこれらの疑問に対する答えは明かされない。

そして最後に明かされるこのタイトルに対する謎の答えはどれもが見事だったと思います。

正直、犯人の目星は何となく付いてしまいましたが(でも少し驚かされたところも)、その上をいく展開と結末がしっかり描かれていて、その上で輪になる物語になっている感じがするのはお見事でした。

評価が高い作品というのも納得です。

 

という訳で間が空いてしまいましたが、とても面白い作品でございました。

ドラマの方もそのうち観てみたいと思います。

 

 

 

『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』

★★★★★  /  (5点)