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先月に再読しておいた『ハロウィーン・パーティ』を元に作成された映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』を観に行きました。
自分はケネス・ブラナーが主演・監督を務めた『オリエント急行殺人事件』と『ナイルウ殺人事件』も観ましたが、先に言っておくと前2作は好きではありませんでした。
「これはポアロではない」とかそういう事は置いておくとして(言い出したらキリがない)、単純に面白くなかったのと、オリエント急行に関しては思い入れも強いですし、そもそもオリエント急行の映画は1974年の旧作版も自分は好きではありませんでした。
三谷幸喜版のはオリエント急行含め、クリスティ作品原案の全般が怒りを覚えるレベルで好きではないです。
オリエント急行はドラマ版を観てみたいな~。
それはともかく、とにかくケネス・ブラナーのポアロシリーズが自分はあまり好きでないため、正直今回の映画もそれほど期待はしていませんでした。
でも本作に関しては前2作と異なり、原作とは大分異なっている様子が予告等から見られたので、少し楽しみにしていました。
ここからが感想。
まず原作との比較という事で言えば、丸っきり違います。
登場人物の名前を借りているのと、ハロウィーンに事件が起きるということ、オリヴァ夫人が登場するという事以外は人物造形も舞台も全く異なります。
特にオリヴァ夫人に関しては「改悪」と言えるレベルかも知れない・・・。
全体的に「これポアロじゃなくても良くない?」という感想を抱いてしまうのですが、とりわけオリヴァ夫人に関してはここまで人物造形が異なると、全くの別人にして欲しかった。
ポアロの友人が原作に殆ど登場しないということで、映画でも新たな友人を登場させないという無駄に原作に忠実にしてしまっていることが、原作ファンには受け入れ難くなってしまっているような・・・。
オリヴァ夫人に関しては原作と異なり、普通に嫌な奴でした。
ただ、自分はこのオリヴァ夫人の改悪という点以外は普通に楽しめました。
まず映画開始後すぐに原作の事は一度完全に捨て去り、映画に集中することにしました。
すると物語も登場人物も全く違うので、シンプルに先が気になりました。
ポアロが子供の亡霊が出るという屋敷で開かれる降霊会に参加し、そのインチキを暴けるのか・・・という原作にありそうで無かった展開。
降霊会と言えば『シタフォードの秘密』を思い出しますが、雰囲気は完全にホラーのそれなので、雰囲気だけで言えば『予告殺人』の一部シーンに近いかも?
はい、本作は本格推理ものというよりもホラーやサスペンス寄りなんです。
自分も途中まで「ここまでのホラー演出は必要なのかな・・・」と思いながら見ていたのですが、解決編を見てその「理由」が明らかになったので納得出来ました。
ホラーな演出が目立ちますが、意外とロジカルな解決がされていたのが面白かったです。
ただこの解決にも問題が無い訳ではありません。
まずオリヴァ夫人に関する推理を披露する場面がありますが、ここに関しては自分は何の文句もなく、きちんとロジカルで納得出来る推理でとても良かったと思います。
ただ殺人事件の方の解決に関しては、ポアロがどういう推理過程を経て解決に至ったのかが分かる描写が極めて少なく、急に自らの推理を披露し出すので唐突感が否めません。
この部分に関しての否定的な意見が結構見られますね。
自分もその意見には賛同しつつ、でもそもそも自分で推理を組み立てりしていないので、「そんなもん分かるか!」というような怒りはなかったです。
飽くまでも「ホラー」という様子を押し出すために、推理の「過程」については描写しないことで観客に恐怖を煽りたかったのでしょう。
ホラー感を出すためにロジカルな「過程」については省かなければならずモヤモヤする。
でも、「過程」を描写すればホラー感が薄れる。
この辺りのバランスが上手くいかなかったですかね。
それと、ロジカルな解決だとは思いましたが、犯人を追い詰めるのに決定的なファクトが欠けていたような気もします。
まぁこれについては、ポアロに限らず、探偵が時折見せる「演技力」と「ハッタリ」でカバーしたということで自分は納得しています。
ということで個人的には前2作よりは全然面白かったです。
今後はオリジナル脚本にしてしまえば良いのでは、とも思いますが、そうすると「ポアロ」でやる意味もないんですよね。
いっそ全くの新名探偵を確立してしまえば良いのに。
「ポアロ」の冠が付いているから観に行こう~というクリスティファンがどれくらい映画を鑑賞するのか気になりますね。
でも自分はそうなんだよね・・・。
そう考えると、「ポアロ」でやり続ける意味もあるのか・・・というジレンマに陥りそうです。
原作だとオリヴァ夫人が出る作品は結構ありますが、このシリーズでの再登場は難しいだろうな~。
逆に原作の評価が低い『ビッグ4』あたりを大幅に改変してやったら面白いのかも知れませんね。
これまでのシリーズと打って変わった作風になるのは間違いないでしょうが(笑)
結局次があれば、次も観るんだろうな。