ここにきて推理小説ではありません。
会社の読書好きの人と意気投合して話し合っていた時に、
半ば無理矢理押し付けるかのように貸されたのが前作の『任侠浴場』でした。
そしてそちらを読了して返却した際に、今度も無理矢理貸されたのがこちらの『任侠シネマ』です。
無理矢理、とは言ったものの前作の『任侠浴場』は結構面白く読めてしまい、今回も楽しみにして読んでおりました。
そもそもこちらのシリーズ、『任侠浴場』の前に3作あるようで、時々前作以前の話が出てくることがあります。
自分はシリーズの途中から読んでしまいましたが、全く問題はありませんでした。
人物の説明は前作の『任侠浴場』の方が仔細に書かれていた気がしますが、恐らく今作の『任侠シネマ』から読み始めても十分に楽しめるかと思います。
お話の流れとしてはシリーズ通して同じなのか、阿岐本親分の兄弟分である永神から潰れそうな施設の立て直しを依頼され、その裏に潜む裏の世界との繋がりを探っていく・・・という流れが基本かと思います。
前作も、そして今作も共通しての自分が感じる一番の魅力は、
何といっても「読みやすさ」です。
展開も割と早く、あっという間に、そして飽きずに最後まで読むことができます。
そして何よりも阿岐本の嗅覚の鋭さと、それに気づかずに振り回される代貸の日村一行の苦労が面白いのです。
極道の現実と組と親父の事を心配して止まない日村と、半ばそんなことお構いなしで人情味溢れる阿岐本の対比が絶妙なのです。
任侠と言っても暴力的なシーンは殆どなく、今時の極道のやり辛さと現代の世の中の在り方に対する憂いが何処か悲哀な感じすらあります。
しかし、シリーズを通して読んでいないから分からないのか、阿岐本組のシノギの中身がイマイチよく分かりません。
まぁそれがメインの話ではないので、どうでも良いといえばどうでも良いのですが。
全体的に抜群に面白い、という訳ではないのですがケチを付けるような部分も全くなく、先にも述べましたがとにかく読みやすいというのがグッドです。
これは日頃読書しない人たちにも打ってつけではないでしょうか。
ちなみに、この原作の作者の方は存じ上げなかったのですが、
なんとビックリ、一昨年まで日本推理作家協会の理事長を務めていた方でした。
推理小説好きの自分とも無縁ではないかも知れない、「任侠シリーズ」でした。
『任侠シネマ』
★★★★☆/(4点)