アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

グリーン家殺人事件 / S・S・ヴァン・ダイン

前から読もう読もうと思ってはいたものの、ついつい先延ばしにしていたS・S・ヴァン・ダインです。
この『グリーン家殺人事件』と『僧正殺人事件』だけは読まなければと思っていました。

とは言うものの、正直期待値は高くなかったです。
普段は推理小説を読む前にレビューを見るなんてこと絶対にしないのですが、今作は経緯は忘れましたが先にレビューを見ておりました。
そのレビューがイマイチだったんですが、レビューの評価と自分の好みは全く別物です。
とはいえ、「古い」なんて評価を見てしまうと、構えてしまうのもまた事実です。
それと、「ヴァン・ダインの二十則」が自分は好きではありません。
面白ければ何をやっても良いと思っています。
という事もあり、そもそもヴァン・ダイン自体に若干の抵抗がありました。

さて、肝心のネタバレは見てませんでしたので、まずは名探偵ファイロ・ヴァンスのお手並み拝見です。
名探偵には共通した特徴があると思うのですが、名探偵が組み立てた推理の断片でさえ終盤まで周囲には隠そうとする傾向があると思います。
このファイロ・ヴァンスも例外ではありませんでした。
しかし今作では本当に終盤まで、この名探偵ですらなかなか真実に近づけません。
そこが読んでてモヤモヤしました。
まぁ最終的には真実に到達するのですが…。

また名探偵らしく、周りからも的を射た発言なのに全然理解されない場面が目立ちます。
人物的な魅力で言えば、個人的には全員イマイチでした。

しかしながら、流石は名作と呼ばれる古典物だけあって、中身はしっかり本格派でした。
お互いに忌み嫌い合うグリーン一家の中で次々に起こる悲劇…
事件が如何にも起こりそうな舞台です。

自分は犯人を当てられませんでした。
部分の謎は解明出来たものもあったのですが…
犯人当てに関しては、ミスリードに引っ掛かりましたね。
その解明の流れについては極めて論理的ですが、動機については作品の雰囲気に寄せてくれた方が納得出来たかな。
でもまぁ、推理出来ないことはありません。

トリックは大したことないと思いますが 、正直誰が犯人でもおかしくない状況で、しかもお互いがお互いに告発し合うシーンがあったりと、登場人物の殆どを一回は疑ってしまいます。

自分がこの真犯人を自分の中の犯人リストから外したのは第五の惨劇に関しては不可能だと思ったからでした。
解決編で空白の時間があったことが提示されるまで、全然気付きませんでした。
この真犯人を除外してしまうと、大まかな所は符号しても細かいところが合わなくなってしまうんですよね…。

というように、論理的にしっかり考えていけば犯人は分かるかと思いますし、ヒントも散りばめられています。
序盤の方であの人が言ってた真犯人の性格は気にはなってたんだよな~…なんて今更ですが。

論理的に、と言いましたが心理的要素も見逃してはなりません。
心理的要素も含めて論理的に考える必要があります。
まさに本格派です。

お話としてはなかなか展開がくどいように感じて正直イマイチでした。
しかし、推理小説としての醍醐味は十分味わえました。
古い、といえばそうなのかも知れませんが、古典物の名作と呼ばれるのも頷ける一冊でした。

『僧正殺人事件』も楽しみにしたいと思います。




『グリーン家殺人事件』
★★★☆☆/(3点)