アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『ニッポン樫鳥の謎』 / エラリー・クイーン

 

一月ほど前に『中途の家』を読破した際に、次の作品が中古でないと手に入らないのでどうしようかと書いておりました。

 

 

wakuwaku-mystery.hatenablog.com

 

それで電子書籍で読めるのは知っていたのですが、やはり紙媒体の方が個人的には良かったので中古で探してみることにしました。

ネットではすぐ見つかるのは知っていましたが、それは最終手段にすると決めておりました。

遠回りも楽しみの一つだと思っています。

それで、そんなにすぐには見つからないだろうと覚悟していたのですが、意外とすぐに手に入りました。

ちなみに手に入れた場所は秋葉原ブックオフで、自分が買った1冊のみが置いてありました。

本題とはズレますが、中古ショップでの古典作品探しは楽しいですね~。

クリスティの昔の版とかも並んでいて興奮しました。

時間が無かったのですぐ出てしまいましたが、余裕があればあと1時間くらい物色したかった。

ちなみに自分が手に入れたのは97年3月7日の52版でした。

 

さて、『ニッポン樫鳥の謎』です。

原題は『The Door Between』ということで国名シリーズにはカウントされたり・されなかったりみたいです。

しかしあとがきによれば、元々は『The Japanese Fan Mystery』(日本扇の謎)という題名で掲載された作品らしく、それが何らかの事情により今の原題になっているようです。

国名シリーズではお馴染みの「読者への挑戦状」こそ挿入がありませんが、自分はこの作品も十分「国名シリーズ」の仲間に入れて然るべきだと読了後に感じました。

何故なら本作はこれまでの「国名シリーズ」よりも、より冠の国名にスポットライトを当てた作品だと思ったからです。

 

今回の舞台はエラリーの暮らすニューヨークです。

そのニューヨークの心臓部に近い場所に日本庭園を構える元・帝国大学教授の女性がいきなり登場するところから始まります。

日本庭園・帝国大学というワードだけで親近感を覚えますが、本作にはそんな日本の文化が色々と紹介されています。

紹介されてはいますが、誤ったもの、勘違いされているものも多分に含まれており、また作者の偏見のようなものも見受られけます。

(例えば、ネタバレになるかも知れませんがジャパニーズ・ハラキリの

それでも、これまでの「国名シリーズ」でも感じていたお飾りだけの「国名」よりも、その「国名」を活かした内容になっていることは間違いないと思います。

ただ、これで日本人が親近感を持って接することが出来るのかと言われるとちょっと微妙かも。

日本人が、というよりも日本に興味のある日本人以外の人たち向けの設定のような気がします。

 

そんな元々日本に暮らしていた元・帝国大学教授が不自然な死を遂げる所から本題が始まります。

今回は登場人物はそれほど多くは無いのですが、なかなかにユニークな人たちが揃っています。

むしろユニークじゃない登場人物なんてエラリーくらいじゃないか?

それくらいの感じです。(エラリーですら無個性に感じてしまう)

ただ今まで通りリチャード警視は相変わらずのリチャード警視ですし、ジューナはいつものジューナです。

振りかってみても、ここまでユニークな人物たちでなければもっと違う展開になっていたのでは?と思ってしまいます。

被害者のカーレンはまともそうに見えますけど、実は・・・。

マクルア博士は元々が変わった人物として知られています。

エヴァに関しては情緒不安定な部分が見受けられ、付いていけませんでした。

テリーも型破りな探偵というのは良いんですが、ちょっと好きになれなかった。

正直、自分にはエラリー以外の人物のことは殆ど理解出来ないままでした。

 

それで肝心の事件の方なんですが、自分はある違和感があったんですよね。

自分はいつも記事を書く際に「あらすじ」の部分は大体端折ってしまいます。

それは何故かと言えば、リンク先に飛んで見てもらった方が早いからです。

でも今回はきちんと「あらすじ」を書くべきなのかと少し考えました。

それは何故かと言えば、自分の違和感の正体こそ「あらすじ」にあったからです。

ここは少しネタバレですが、この「あらすじ」こそが最大のヒントになっています。

 

事件は二転三転、四転くらいします。

この本を読了した際に古畑任三郎のとあるエピソードを思い起こしました。

自分はその部分は蛇足だった気がしないでも無いです。

ちなみにその部分はドルリー・レーン四部作に通じるものもある気がします。

 

 

日本の文化と事件が結びつくのは確かに面白いんですが、これがすんなり日本人に受け入れられるのは難しいかも知れない。

そんなことを考えてしまった作品でした。

それがどういう意味なのかは、これはやっぱり読んでもらうしかないでしょう。

ただし、自分はやっぱりこの作品には「国名」が入って然るべきだと思います。

よく見たら、創元推理文庫の作品欄でも『ニッポン樫鳥の謎』は国名シリーズの一部として紹介されています。

(手元の97年版のものでは)

綾辻行人の「館シリーズ」だって全10作予定なのは「国名シリーズ」が10作だからなんですよね。

自分も「国名シリーズ」はこの『ニッポン樫鳥の謎』までの10作+1(中途の家)で良いような気がします。

 

肝心の事件の方は、これはこれで忘れられそうもないインパクトだけは強烈に植え付けられました。

ただし、自分にはエラリーのようにそれを自信満々と語る度胸は無いなと思います。

面白いかどうかでいうと、ちょっと長く感じるくらいだったので面白さはいま一つだったかも知れません。

でも読む価値のある作品であるとは思います。

とりあえず復刊されるのか微妙かも知れないので、中古で買った本ですが大切にしようと思います。

 

 

『ニッポン樫鳥の謎』

★★★☆☆  /   (3点)