正直この作品を手に取った経緯をよく覚えていません。
このシリーズの2作目が出た頃に買ったのは確かだと思うのですが、でも平積みされてたような記憶も無いんですよね。
ただ、目次を見て「チープ・トリック」という章があったのと、ラノベっぽくて読み易そうと思ったのは覚えています。
これまた忘れていたのですが、この作者の方は『体育館の殺人』を書かれている方ですね。
買った際には全く気付いておりませんでした。
というのも私、『体育館の殺人』から始まる一連のシリーズはずっと気になってはいたものの、まだ読んでいませんでした。
これは、もう少しクイーンの作品を読み漁ってから有栖川有栖の国名シリーズを読み、その後に読むのが流れ的に良いかなと勝手に思っていたので。
なのでメチャクチャ気になってはいるのですが、実際には『体育館の殺人』を読むのはまだまだ先になると思います。
(あとがきに体育館~の話が出てきましたが、読み飛ばしました)
なんてことを言っておきながらの初の青崎有吾作品になってしまいました。
実際に中身にはホームズの話やクイーンの国名シリーズの話、その他自分はよく知らないミステリーの作品の話が随所に散りばめられております。
(その内の国名シリーズのものに関してはネタバレ感がある)
自分の周りにはミステリー好きって全然居ないので、同年代でミステリーマニアかつミステリー作家っていうだけで嬉しく思います。
本作は短編集になっており、全部で7編になっております。
これは個人的な感想ですが、作風は表紙からも既にそうですがラノベっぽいです。
タイトルの「ノッキンオン・ロックドドア」とは探偵事務所の名前で、この探偵事務所には二人の探偵が所属しています。
1人は「不可能専門」御殿場倒理。
もう1人は「不可解専門」片無氷雨。
うん、名前がもうラノベっぽい。
ちなみに「不可能」というのは不可能的トリックのこと、「不可解」というのは事件の動機や背景のこと。
互いの得意分野が異なっており、時には協力して事件を解決する二人で一人とも言えるスタイルの探偵事務所です。
この探偵事務所の名前から思い起こすのはボブ・ディランの「Knockin’ On Heaven’s Door」ですね。
でも本作で中心になるのはディランではなくチープ・トリックです。
そんな音楽的話は置いておきまして、本作は設定こそライトノベル風ですがミステリーの中身は本格的です。
ただトリックの方は理解出来ても、動機の方は「どうなんだろ・・・?」と思わなくもないことがありました。
自分はそれが結構モヤモヤしました。
ただ探偵役が二人居るという設定は面白かったです。
お互いがお互いをある意味ライバル視しているので、片方が鋭い推理を見せると悔しさを滲ませ、逆もまた然りというシーンが見られ新鮮でした。
しかもそれはお互いの推理の欠点をお互いに担う場面もあれば、尻拭い的な意味を持つ場面もあり、お互いが協力?して解決へ導くこともあります。
要は役割が決まっている割には決まったロジックがなく、一本調子にならないという点では凄く良かったと思います。
ただし、物語的な面白さと謎解きそのものに関しては自分的にはいま一つでした。
飽くまでこれも個人の感想ですが、本格推理よりももう少しラノベ寄りにして物語的な面白さを演出した方が良かったのではないかと思います。
でもそれが難しいというのが宮部みゆきの指摘でありますので、飽くまで謎解きを追い求めるのが「本格推理」なのでしょう。
勿論謎解きが面白かった話もありましたので、シリーズ2作目もいずれは読んでみたいと思います。
チープ・トリックの件は殆ど書きませんでしたが、実際にチップ・トリックの曲が作中には引用されておりますので、自分と同じような切り口で興味を持った方も是非読んで欲しいと思います。
『ノッキンオン・ロックドア』
★★(★)☆☆ / (2.5点)