金田一耕助シリーズを読むのは久々になってしまいました。
今回は『三つ首塔』ということで、前作の『迷路の花嫁』と『女王蜂』を混ぜ合わせたような物語でした。
序盤から中盤頃までが前作と似たような展開だったので、正直「またこの展開か・・・」と思いながら読んでました。
男から逃れられない女が色々な事件に巻き込まれる話です。
それに加え本作では前代未聞とも言える条件付きの遺産相続が絡んできており、次々に殺人事件が起こります。
そういう意味では犬神家の亜種とも言えるかも知れませんが、内容は全く異なります。
犬神家のような濃厚な展開にはなりませんので、ご注意下さい。
序盤から結構衝撃的な展開(殺人事件とは別)があって、キーマンの一人である高頭五郎なる人物が、作中でも繰り返される「悪人」という印象がこびり付いてしまい、いささか気分の悪い展開でした。
またその被害者とも言える音禰(オトネ)も音禰で好きになれず、賢そうに見えて全く賢くない言動に若干のイラつきを覚えました。
とはいえ本作は音禰の視点で語られることになりますので、その悲劇的とも言える(自業自得と思える部分もあるが)立場には同情しながら読んでいました。
物語が後半に差し掛かったところ冒頭のプロローグで語られていた場面に話が繋がる事になりますが、そこからの展開は物語の景色が全く変わってきます。
どういう事かは是非ご一読を。
それにしても全ての全貌が明らかになっても合点のいかないことが。
一番は五郎が音禰に仮面を着けさせて某クラブへ連れて行ったこと。
ここの服装についてだけが「一体なぜそんなことを?」と思わずにいられません。
全体的に性的な表現も多い本作ですが(それでも前作より全然マシだと思う)、それ故の展開だったのか。
あんなことしなければ、後の惨状は回避出来たかも・・・と思ったりします。
それと犯人は確かに意外ですが、そう言われても納得しにくいですよね。
特に計画的な犯行ではなく場当たり的な犯行がたまたま上手くいっただけ、というような事を言われましても・・・。
金田一耕助もオマケ程度にしか出てこず、まぁそれは最早いつものことのような気もしますが、今回はバタバタと人が死ぬ事になり、それで良いのか?という気はします。
金田一耕助も特にそのことを気に咎めている節もなく、まぁ殺された被害者たちが殆ど悪人だったからなのかなぁ。
ただ本作での金田一の出番は少ないとはいえ、その手腕はいつも以上に買われておりヒーロー的な存在として描かれている部分もあります。
ただ自分としては中盤までの目の敵にされている可哀想な金田一という構図のが面白かったですけど(笑)
自分が楽しんだのは当時の東京の風景を思い浮かべながら読んだことです。
この作品では日比谷・新橋・銀座などの現在の東京都中央区・港区・千代田区の境界線エリアが中盤までは頻繁に出てきますが、自分も現代の風景はわりかし知っているので、その辺りの風景を想像しながら読むのは楽しかったです。
ただ一つ「尾張町」というのが聞き覚えがなく、調べたら銀座五丁目あたりのことみたいですね。
今でいう「銀座四丁目交差点」の旧名が「尾張町交差点」なんだとか。
当時は銀座も四丁目までしか無かったとか。
今では超有名な交差点なのに全然知りませんでした、
派生して色々分かって面白かったです。
全体的には、やはり前作と似てる部分も多いですし、前作が個人的にはかなり面白かっただけに本作はどうしても見劣りしてしまいます。
悪くもないんですが、良い点も特にないかなと・・・。
ミステリーとして読むとイマイチだと思いますが、メロドラマとしてなら楽しめるかも。
これはどこかのレビューにも書いてあったんですが、三つ首塔という如何にも怪しい建物が活かされていなかったのが残念でした。
でも、それを利用して複雑にされるよりは良いかなとも思っています。
前作もそうですが、女性が読むと腹が立つような内容かも知れません・・・。
『三つ首塔』
★★☆☆☆ / (2点)