久々の更新となってしまいました。
そして久々の金田一耕助シリーズです。
本格推理小説とは言えない本作ですが、あとがきの言葉を借りれば「サスペンス・ロマンス」として個人的にはとても面白かった作品です。
横溝正史の描く世界観はいつも妖艶でエロティシズムを感じさせる描写も多いですが、本作は特に多い、あるいは直接的というか、とにかく虐げられる女性たちが度々登場するので不快に思う人も居るかもしれません。
自分はどちらとも言えない感覚で読んでいましたが、それでもいつもよりも妖艶さは感じた気がします。
本作では金田一耕助の登場する場面は極端に少なく、殆どが主人公格の一人である松原浩三という人物を中心に進んで行きます。
この松原浩三という男が読者からしてもなかなかに食えない男で、敵なのか味方なのか、何か目的があるのか、それとも金田一耕助の言う通り「英雄」なのか最後の場面まで判別できませんでした。
しかし、この松原浩三がどんな人物かはっきりと分かった時、それがクライマックスに達する時です。
どんなクイラマックスを迎えるのかは是非本作を読んで確かめてみてください。
自分はこのクライマックスをとても気に入りました。
ちなみに物語の最初に殺人事件が起こりますが、正直言ってこの事件に関してはオマケ程度の扱いです。
この事件に関しては自分もキチンと理解しきれていないような気がします。
それほど複雑な事件ではないのですが・・・。
複雑と言えば、人物相関図に関しては本作は結構複雑です。
時代背景も相まってというのもありますし、そもそも登場人物も多めです。
殺人事件はオマケ程度ですが、最初に書いた通り「サスペンス・ロマンス」として楽しめる作品ですので、物語を楽しむためには登場人物相関図の理解はある程度必要になると思います。
そこはしっかりついていきましょう。
ということで個人的にはとても面白かった作品でした。
金田一耕助の活躍を期待する人には物足りないかも知れません。
この作品はドラマでも観てみたいかも。
『迷路の花嫁』
★★★★☆ / (4点)