「孤狼の血」シリーズ第2段です。
前作を読んでからどれくらい経つか分かりませんでしたが、
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どうやら2年近く経つ様です。
シリーズ最終作が今年の頭頃に文庫版として刊行された際に、これは読みたいな~と思っていましたが、このタイミングでの読書となりました。
自分は映画の「LEVEL2」まで観てから原作に手を出しているので、1作目は映画版の比較して楽しむという側面もありましたが、今回は映画では殆ど描かれていない話になりますので、ここで映画版と分岐したような形になりますかね。
と言っても、「LEVEL2」のラストと本作の日岡の勤務地は重なる部分があるような気もするので、今後映画版と原作がどのようにリンクするのか気になります。
さて、そんな原作シリーズの第2段である本作です。
正直、1作目を読み直してから読めば良かったと思いました。
極道組織の会派がかなり細かく出てきており、前作でも登場した派閥も併せて登場してくるので結構混乱しました。
ただ、本作だけでも楽しめないことは無いと思います。
でも本作に関わる極道組織の人物相関図もなかなか複雑に感じます・・・。
サラリと相関図について説明されますが、一度で頭に叩き込めない自分の読書センスの無さが原因でしょうね。
とは言え、読み進めながら整理して何とか読めました。
今回はある意味では日岡も魅かれる極道である国光なる人物が登場し、更に前作にも登場した一ノ瀬も色々関わってきて極道の所謂「戦争」に日岡がどう立ち向かうのかという話になっています。
と言っても、今回の日岡は「僻地の駐在に異動」させられており、田舎の交番勤務という立場になっています。
つまりは前作の話の後で左遷されたということになり、そんな立場になってしまった日岡にとって目の前に現れた国光はまさに四課に帰るのに絶好の「手土産」となる存在です。
ですが、日岡は国光をすぐにハメたりしません。
これが本作の物語の始まりであり、勿論その後色々な展開が巻き起こります。
本作を読むと、物語が違うのは当然として、やはり映画版と原作では日岡の造形が違うように感じます。
特に本作のキーマンであり前作で退場してしまった大上に対する描写が特にそう感じます。
「LEVEL2」では大上を尊敬しつつも、どこか否定した考えを持ち合わせていましたが、原作での日岡は大上に対する直接的な描写は無い物の、どこか憧憬の存在として日岡の中に存在しているように感じます。
ただ映画版も今後どうなるのかは分からないので、飽くまで現段階での自分のイメージに過ぎませんが。
次作がシリーズ最終作となっているそうですが、正直本作は次作への布石でしかないのでは?と感じます。
物語的には面白いは面白いのですが、やはり前作のようなインパクトはなく、だけれども日岡の「変化」は前作と同じくらい濃く描かれています。
映画ではどのような道を歩んでいくのか不透明ですが、原作シリーズでの日岡の方向性は本作を持ってある程度定まったように感じます。
そして次作、そこでこそ日岡が何かしら「行動」を起こす事になると思いますが、ある意味大上の意思とは似て非なる道を歩もうとしている日岡が今後どうなっていくのか。
本作はそういう期待感を煽るための布石として置かれたように感じます。
これは次作が非常に楽しみになってきました。
なるべく早めに読みたいですけど、まだ先になりそうです。
『凶犬の眼』
★★★☆☆ / (3点)