これも夏の文庫フェアで買った作品なんですけど、これだけ後から買い足してるんですよね。
後から買い足してるのに、まだ読んでない作品があります。
本作は第2回日本推理サスペンス大賞受賞作品ということです。
と言っても、この賞レースは全部で7回しかないようで、正直他に知ってる作品は高村薫の『黄金を抱いて翔べ』だけでした。
ということで宮部みゆきの作品だから間違いなく面白いだろうという先入観を持って挑んだ訳なんですが、途中まではかなり面白かったです。
ただ終盤の展開から急激に冷めていきました。
宮部みゆきらしい素晴らしい文章と描写は本作でも堪能出来るんですけど、この作品には「核」となるものが存在しないように感じました。
これも宮部みゆきらしく、本筋とは少し離れたようなエピソードを散りばめてより物語に没入出来るように、より臨場感を感じられるように作られているんですよね。
それが『火車』とか『模倣犯』では物凄く良い方向に作用していたと自分は思っているんですけど、本作では逆にそれが仇になってしまったのかなというのが一つあります。
この主人公の守のバックボーンやら心理描写やらを丁寧に描いてはいるものの、それが結局活きてくることはなかったように感じました。
それから事件の真相と犯人について、納得できない所が多いというのが一つ。
いや、サブリミナルとかって自分が生まれる前からもう言葉とか効果の実証とかあったのねっていう驚きはありました。
で、それが事件の真相へ繋がる伏線みたいなことになっているんですけど、なんというか・・・漫画『探偵学園Q』みたいな展開だったんですよね。
まぁそれが「なんじゃそりゃ」っていうのはあったんですけど、そんな犯行の手口なんかよりも、犯人側の犯行動機とか、犯人が言う「自分と守は共通点がある」とか、それを経て守が「犯人に共感する」とか、この展開が全く納得出来ませんでした。
それを経てのラストの展開も全然面白いと思えませんでした。
所詮娯楽小説なのでメッセージ性なんてなくても面白ければ良いと自分は思ってるんですけど、本作は面白くもなければ伝えたいことも理解不能で、終わってみれば拒絶反応しか出ない作品でした。
途中までは面白かった分、この終盤の展開は非常に残念です。
解説にありますが<語りのテクニック>だけは改めて凄いとは思いました。
ということで、今まで読んだ宮部みゆきの作品では唯一のつまならないと思った作品でした。
と言ってもこれでまだ5作品目くらいですけどね。
前4作を読んだ限りだと、現代最高の小説家と言っても過言じゃないくらい凄い人だと思っていたので、その反動もあって落胆してしまいました。
ただまぁ、飽くまでも個人的な感想ですし、この作品が良かったとレビューされている方も沢山いました。
あとは流石にどんな偉大な作家でも全作面白いっていうのは無理ですよね。
食べ物の好み同様、読書の好みも十人十色だと思いますし。
ドラマ化もされている作品らしいですので、そっちも観るかも知れません。