アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『invert 城塚翡翠倒叙集』 / 相沢沙呼

 

 

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『medium』の続編が文庫化されましたね。

『medium』は元々読みたいと思っていた作品で特に期待も高かった作品でしたが、個人的にはイマイチだった印象です。

と言っても中身は最初の章と最後の章以外殆ど覚えていません。

読後、ドラマ化もされて観ようかと思っていましたが結局観ずじまい。

観てないのでよく分かりませんが、ドラマ化については本作『invert』の内容も含まれているんですよね・・・?

どこまでがドラマ化されているのかよく知りませんが、どちらにしても結局ドラマは観ずに終わりそうな。

 

ということで本作『invert 城塚翡翠倒叙集』です。

倒叙」と言えば最も有名なのは<刑事コロンボ シリーズ>でしょう。

ですが、実は観たことがありません。

コロンボシリーズは金田一耕助シリーズと並んで観てみたいと思っていた作品で、大人になればなるほどコロンボは特に気になっているシリーズなんですが・・・。

huluだと観れるみたいなんですが、自分は契約していないのでダメなんです。

うーん。

 

コロンボの話は一旦置いておいて、そうなると自分の中で「倒叙」を用いた代表作と言えば<古畑任三郎シリーズ>です。

自分の中での基礎となる探偵像を形作っている架空のキャラクターが自分の中には3人居ますが、その内の1人が古畑任三郎です。

この3人には実は自分の中で持っているある共通点がありますが、残りの2人についてはまた機会があれば書きたいと思います。

さて、そんな「倒叙」=「古畑任三郎」というイメージがあると言って過言ではない自分ですが、本作はまさしく古畑任三郎を意識して書かれている節があります。

きっとコロンボもそうなんだろうけど、自分には分からないので・・・。

そもそも古畑任三郎が既にコロンボに影響されている訳ですから、その脈絡上に本作が置かれているという事は間違いないと思われます。

 

とは言っても「倒叙って結局何なの?」という方も居るでしょう。

ここでは倒叙ミステリーに限って説明することにします。

端的に言えば、読者あるいは視聴者側に初めから犯人及び犯行の一部ないし全部が明かされた状態で、探偵役と犯人側の駆け引きが描かれる演出の方法のことです。

なので倒叙に限って言えばフーダニットは殆どあり得ないということになるでしょう。

(例外はあります)

本作には3篇の物語が収録されていますが、全てが犯人が犯行を犯す場面が起点となって物語が開始します。

 

①「雲上の晴れ間」

はっきり言ってしまえばネット上のクラウドに絡んだトリックやお話ですね。

これに関してのトリックは割と簡単に見抜けるのではないかと。

勿論、全部が全部見抜けるとは限らないでしょうが、メイントリックは結構簡単かと。

犯人側の境遇が、一瞬『ロートレック荘事件』を彷彿させました。

 

②「泡沫の審判」

針の穴をつくような推理が披露されますが、その推理がお見事でもそれが面白いとは限らないというパターンの典型かなと。

正直、犯人側の動機もちょっと弱い気がしています。

殺しまでしなくても、他に方法が考えられそうなものですが。

それよりも、この話では教育現場の深刻さ・大変さが描かれていて、そっちの方が興味を惹きました。

以前、本作の主人公と同じく小学校教員が残業代の申請を求めて裁判で争った事例で、最高裁判決で上告が退けられたと話題になっていましたが、あのニュースを思い出しました。

殺人と同じくらい恐ろしいかも。

 

③「信用ならない目撃者」

正直、前の2編はチュートリアルみたいなもので、この3話目が肝心の話なんだろうなと勝手に考えていましたが、勝手に肩透かしをくらいました。

やっと上をいく強敵出現か!?と思いきや・・・。

とは言え、追い詰めかたの部分に関しては気づかなかったな~。

犯行の方に関しては気づいていた部分もあったけど。

でもそうして思い返してみる、色々な描写の辻褄があいます。

これが卑怯だと言うレビューもありましたが、まぁその気持ちは分かる。

正直、自分も好きな話ではありませんでした。

よく見ると表紙がちょっとヒントになってるような・・・?

 

 

 

ということで、全体通して本作も個人的にはイマイチでございました。

読み易いのは読み易いです。

逆に言えばライトノベル感があるかも。

それは前作もそうでしたが。

あと本作も前作もビニールに包装されていて立ち読み出来ないようになっていたのが印象的です。

ここ最近の文庫でそんな包装されてた作品あったかな~?

でもレビューを見てちょっと納得。

このシリーズ、物凄い人気ですね。

自分はこの探偵役の城塚翡翠なる人物が好きなのかどうかよく分かりません。

彼女が探偵役として動く原動力になる正義感がどういう物でどこから来るのかがよく分からないからです。

この部分に関してはどうでも良いとも言えるし、大事とも言える。

ただいい加減な正義感を描くことにはどうしても感情移入しにくいというのが個人的な所感です。

あと、途中で推理小説の楽しみ方について語られる場面がありますが、自分からしたそれも殆ど共感できず。

ただ、推理を楽しむというより驚かせて欲しいという部分は当たっているかも。

でもね、驚くってことはそれだけ夢中になれるような物語や展開になっていないとね。

 

 

 

 

『invert  城塚翡翠倒叙集』

★★☆☆☆  /  (2点)