これも読み返したいとずっと思っていた一冊です。
面白いと言う記憶はあったんですが、中身を殆ど忘れてしまっていたので。
だって彼は殺されたんでしょ?
というコーラの台詞から物語が展開される作品で、この台詞を知らないミステリー好きは居ないのではないかと思うくらい重要な一言です。
それこそ、「ギムレットには早すぎる」クラスの台詞だと思ってます。
勿論その台詞は覚えていたんですが、物語の展開どころか犯人すらも忘れていました。
そんな状態で再読した本作ですが、中盤くらいまでは「すごく面白いと思ってたのは気のせいだったか?」という感じでした。
ところが中盤以降は一転して、夢中になってあっという間に読み終えてしまいました。
いや~物凄く面白かった!
まず途中までは登場人物が多すぎると思っていましたが、読み進めてる内にその人間ドラマに引き込まれました。
特にティモシーが良い味を出していて、多くの読者が彼には嫌悪感は抱いたのではないでしょうか(笑)
自分もそうです。
また、地味にグレゴリーも良い味を出していて、ポアロじゃなきゃ踊らされてるんじゃなかろうかと思うくらい、厄介な人物です。
ロザムンドのような魅力的な人物を描くのがクリスティは本当に上手だな~。
それ以外の人物もリチャードの遺産を必要している様子が描かれており、人間ドラマとして完成しているなと改めて感じました。
それと、ポアロの整理立てて推理していく様子が素晴らしかった。
読者側ですら忘れていたような細かい情報をポアロは推理に組み込んでおり、自分なんかは「そんな描写あったっけ?」と後から読み返してみると「本当だ!」となるパターンが今回もありました。
今回も、というのはクリスティの作品はこのパターンが非常に多いからです。
こんなにも解決編でワクワク出来たのは久々だったな!
そして犯人役も非常に魅力的です。
細かく書くとネタバレになってしまうので書けませんが、犯行の動機からトリックまで、ポアロの推理を聞くと納得するばかりですし、人物としても嫌いじゃなかったです。
やっぱりこの大胆さが自分は気に入ってるんだろうな~。
あと、「あとがき」も良かったです。
倒錯物で有名な折原一が書いてるんですけど、折原氏の選ぶクリスティ作品ベスト10が載っています。
これは個人的には納得感のある選出が多かったです。
「ああ、この作品も読み返したいんだよな~」という作品もありましたし。
ある意味では内容を忘れていた自分に感謝です。
本当に面白かったから。
ハヤカワ文庫の巻末には長編ポアロシリーズの作品一覧が掲載されていますが、自分は上段の方が強いなと思っていたんですが、改めて見返すと下段にも好きな作品が結構ある。
『葬儀を終えて』も下段の作品です。
ただ上段は『ビッグ4』以外は全部好きと言うくらいの作品群で、下段は個々で見ると強い作品が含まれているという塩梅で、『葬儀を終えて』はかなり強いですね。
本作は、やはりクリスティ作品の中で好きな作品として挙げられる事も多い印象ですが、読み直してみて納得しました。
中盤以降の引き込まれ方が凄い。
アガサ・クリスティの魅力を再認識出来ました。
もしこの記事を読んでいる未来の自分が、本作の内容をまた忘れてしまい再読しようと悩んでいるなら、未来の自分に言っておきたい。
今すぐ読み直せ!