アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

刺青殺人事件 / 高木彬光

 

読み終わるまでタイトルを「いれずみさつじんじけん」と読むものと思っていました。

「しせいさつじんじけん」なんですね。

ずっと勘違いしてました。

 

実はこの本、手に入れるのに時間がかかりました。

基本的に本もCDも直接店で買いたいというこだわりがあります。

行った店にお目当ての物が無ければまた別の店へ、更に無ければまた別の店へ・・・。

そうやって足を使って、時にはネットを使って調べて極力店で直接購入しようとしていますが、今すぐに手に入れたい場合、あるいはどうしても手に入らない場合はネット通販や電子書籍を頼ることもあります。

あるいは取り置きを頼む場合もあります。

で、肝心のこの本ですが、実は元々は最寄りのよく行く書店に置いてあったんですが、買うのを先延ばしにしていました。

そうしている内に、いつの間にかに書店の棚から消えていたのです。

誰かが買ったならまた入荷するかな~と思って待ってみましたが、全く入荷されず。

そこから大きめの本屋を何軒かまわりましたが、なかなか見つからず。

もうここで見つからなければダメかもと思って行った丸の内の丸善でようやく見つけることができました。

 

探す過程は本の中身とは関係ありませんが、読み手としては苦労して手に入れた物は思い入れがあります。

この本もそういう意味で忘れることは無いかも知れません。

 

さて、前置きが長くなりましたが肝心の中身です。

日本の三大名探偵と言えば明智小五郎金田一耕助、そして『刺青殺人事件』に登場する神津恭介です。

明智金田一の本は何冊か読んだことがありましたが、神津恭介とは初対面?でした。

そんな自分にとっての最後の三大名探偵ですが、本作の後半まで名前すら出てきません。

事件が迷宮入りに差し掛かろうかというところで、満を持しての登場となります。

なんというか・・・想像通りの名探偵でした。

天才肌の美青年。

嫌いじゃなかったです。

 

事件自体は個人的にはさほど盛り上がらなかったんですが、タイトルにもある「刺青」の話は面白かったです。

本書の冒頭で刺青の歴史にほんの少し触れていますが、日本が世界に誇れる技術を持っていながら、芸術的というよりも後ろ暗い印象を持たれがちな刺青というテーマに登場人物たちが翻弄されていく様子は面白かったです。

龍が如く」というゲームでも刺青の話が出てきましたが、それを思い出してしまいました。

どっちかと言えば、『刺青殺人事件』の登場人物たちは宿命よりもファッション感覚の方が強いように感じてしまいました。

 

事件は3回起きます。

一つ目の事件が一番の目玉となる事件でしょう。

密室のトリックは自分には分かりませんでしたが、その先の謎については何となく想像していた通りでした。

二つ目の事件はやっぱりなという感じ。

三つ目の事件については納得がいっていません。

これについては被害者が無用心過ぎる気がしてなりません。

犯人側の思惑通りに行きすぎなような気がします。

 

密室トリック以外のトリックについては想像が出来るものもあったんですが、肝心の犯人については決めてが分かりませんでした。

神津はファイロ・ヴァンスよろしく、盤上の戦いで相手の心理を量ってしまいます。

ちなみに解決編の前にはワトソン役の研三が『グリーン家殺人事件』と同じように、事件のあらましを書きまとめています。

一応この書きまとめだけでも犯人の推理は可能となっていますが、ちょっと難易度が高すぎるような・・・。

ただこの作品、犯人はある程度絞られているんですよね。

その中から犯人が誰か当てるわけですが、自分はまんまとミスリードに引っかかった形となってしまいました。

 

ワトソン役の研三を初め、登場人物たちは刺青の魅力に魅かれる人たちばかりです。

そして読む進めている内に、その気持ちも分からないでもないような気がしてしまいます。

刺青の持つ妖艶な色気を含んだ魅力が文章から伝わってきました。

そういったお話としての魅力は自分には好印象でした。

ミステリーとしてのトリックや謎の深さ・楽しさということでいえば、微妙なところです。

でもまぁ、雰囲気としては十分楽しめたと思います。

 

ちなみにこの作品、49年の日本推理作家協会賞の候補だったそうで。

しかもその時の大賞が坂口安吾の『不連続殺人事件』で、他の候補に横溝正史の『獄門島』が入っているという凄い年ですね。

この次の年では別の作品で高木彬光先生も大賞を取っているようです。

それもいずれ読んでみたいです。

ちなみに、日本三大名探偵に数えられている神津恭介ですが、他の2人に比べると知名度が落ちます・・・よね?

他の作品を手に入れようとすると、なかなか書店では難しいかも知れません。

それでも、本屋に絶対に置いてあるであろう『人形はなぜ殺される』は絶対に読もうと決めています。

それがいつの事になるかは分かりませんが、きっと順番通りには読まないだろうな~とは思ってます。

 

 

本題とは大分かけ離れたことばかり書いてしまいましたが、自分はこの作品好きでした。

昭和な雰囲気も味わえますし、刺青の魅力も、事件の雰囲気も、そして名探偵の登場も良いバランスだったと思います。

もう一つ突出した何かがあれば、もっと良かったかな。

 

とにかく、読んで良かったです。

 

 

 

『刺青殺人事件』

★★★☆☆ / (3点)