Amazonのリンクを貼りつけてますが、kindle版だとこういう表紙のようです。
自分は文庫で買ってますので、表紙が違う物でした。
さて、刊行順でいきますとシリーズとしては3作目になります。
正直、自分はこの作品はタイトルすら知りませんでしたし、期待値も低めでした。
しかし、予想外にかなり面白かったです。
推理する、というところに重きを置く人には向かないかも知れません。
他の作品にもこういう構造になっている推理小説はありますが、この作品についてはそもそも終盤までその構造が一切分かりようが無いので、最後の最後で急に事件の見方を変える必要が出てきます。
そこからは恐らく推理も可能だとは思いますが・・・さて、どうでしょう。
お話としては推理小説のオーソドックスなパターンと言えるかもしれませんが、だからこそとても読みやすく、メチャクチャ面白いです。
「これに似たの読んだことあるな・・・」と思うんですが、よくよく考えみると『夜歩く』のが全然先なんですよね。
また、夢遊病・くる病・曰くつきの一族・首無しの死体・狂気じみた登場人物等々、金田一らしさがよく出ていると思います。
そして自分がこの小説で一番気に入っているのは、複雑さがないこと。
登場人物もさほど多くなく、事件の進行もシンプルです。
ですが、シンプルだからこそ見落としてしまう事実があると思います。
自分なんかはまさにそうでした。
それともう一つ気に入ってるのが、この本物凄く読みやすいです。
ページ数も約330ページほどしかなく、お話としてもとても面白いのであっという間に読めます。
初心者にもオススメ出来るかも知れません。
総括すると、金田一耕助シリーズではお馴染みのドロドロした人物関係、狂気じみた登場人物、性的な描写等々がバッチリ描かれています。
このあたりは『本陣殺人事件』、『獄門島』と遜色ないと思います。
むしろ面白さで比較しても、上記2作を人によっては超える知れません。
自分なんかは『獄門島』より『夜歩く』のが面白かったかもしれません。
ただ『獄門島』は舞台設定やトリックの印象が強いので、『夜歩く』は「面白かった!」という感想だけが残るパターンかも知れません・・・。
敢えてケチを付けるとしたら、事件の解決方法がちょっと微妙かも知れません。
でも、そんなの些細なことだと自分は思っています。
ちなみに、この本では金田一耕助は割と終盤に出てきます。
冒頭にも述べた通り大して期待はしてなかったんですが、それがかえって良かったのかメチャクチャ面白かったです。
こんなアイディアの小説が約50年前に書かれていたなんて、すごいことです。
これぞ和製推理小説と言える1冊を読めて、非常に満足です!
『夜歩く』
★★★★★ / (5点)