自分がこの作品を読む前に知っていた情報は、
①2部構成であること。
②2部では名探偵の苦悩が描かれていること。
の2つでした。
第一部に関しては普通の?推理小説です。
「メルヘン小人地獄」なる童話をなぞった殺人事件が次々と起こり、特殊な毒薬を用いた殺人事件であることが判明するという内容です。
この「特殊な毒薬」が第2部への前振りとなっています。
(そもそもこの毒薬についてツッコミ処がありますが、そこはフィクションと楽しみましょう)
第一部よりも、やはり本作の魅力は第二部にあると考えています。
それもそのはずで、解説によれば第一部は後から書き足された話らしいです。
先にも書いた通り、自分は第二部では名探偵の苦悩が描かれていることを知っていました。
知っているからこそ、なまじ色々な推測をしてしまい、そしてそれが悉く上を行かれました。
「恐らくこういう内容になるんじゃない?」と考えいたことがありましたが、それがすり抜けていくような感じでした。
二部の方がページ数も少ないんですが、それは前置きが無い分なのかなと思います。
逆に言えば二部の方が展開も早く、それも二転三転と展開していくため読み応えがありました。
「名探偵としての苦悩」という部分ですが、確かにそれは描かれてはいるものの、「名探偵としての苦悩」というよりも別の苦悩のが強い感じが否めない気がします。
それを含めての『名探偵に薔薇を』というタイトルになっているのかも知れません。
「名探偵も人間。だから人として人並の苦悩もある。」というテーマが二部の本当のテーマなのかなと。
個人的には名探偵役の瀬川みゆきは好きでした。
「どんな選択も自分が下したものだ。どんな結果も責任はそれを選択した者にこそある。その結果は選択した者が負い続ける。」という台詞は好きでした。
ページ数もそれほど多くなく、読みやすい割に読み応えはしっかりあったなというのが読後の印象です。
『名探偵に薔薇を』というタイトルの真意が自分には掴み切れていない気がしていますが、しかしこれだけ分かり易く名探偵が存在する小説はかえって気持ち良かったです。
ただ面白いんですが、何かが足りないような・・・。
タイトルとテーマに期待し過ぎたのかも知れません。
意外とこれって推理小説なんか全然読んだことない人が読んだ方が面白いのかも、なんて思ったりもします。
でも面白かったですよ。
『名探偵に薔薇を』
★★★☆☆ / (3点)