桐島~の余韻が自分の中で冷めやらぬ中で、今月公開予定の映画に向けてと思われる書店の平積みに目を奪われ購入したのが昨年末のことです。
それをナンダカンダでこのタイミングでの読書となりました。
本書は統廃合が決まった高校で取り壊しの前日に行われる卒業式を舞台に、様々な主人公にスポットライトを当てる短編集です。
「卒業」と「廃校」が重なり、そんな特別なタイミングで各々の主人公が思いの内を明かしたり行動したりする作品で、主人公たちは全て女子となっています。
勿論男子も出てきますが、物語は全て主人公である女性目線で進んで行きます。
登場人物それぞれには関連性は殆ど無く、それぞれが独立した物語となっています。
これは読了してから気づいたのですが、本作に収録されている物語は時系列順に収録されています。
最初の物語である「エンドロールが始まる」は卒業式前日から卒業式開始前まで。
次の「屋上は青」は卒業式開始直前から早津行式開始直後あたりまで。
次の「在校生代表」は卒業式の最中。
次の「寺田の足の甲はキャベツ」では卒業式が終了し、更に終業後の話に。
次の「四拍子をもう一度」では卒業式終了後の恒例卒業式ライブの話に。
次の「二人の背景」は殆どが回想シーンですが、これも卒業式終了後の話。
そして最後の「夜明けの中心」では・・・これだけは語るだけ野暮かも知れません。
ハッキリ言ってこの作品大好きでした。
「少女趣味だね」と言われれば素直に肯定するしかないかも知れませんが、そんなこと言われても好きな物は好きです。
どの章も好きですし、心に残る話ばかりでした。
「エンドロールが始まる」は展開は読めてしまいつつも、少し切ない話にホロリときました。
「屋上は青」は主人公の女子に共感出来るポイントがかなり多く、この章が一番自分と重なってグッと来てしまいました。
「在校生代表」はどこか寒いスピーチ形式で語られる話ながらも、着地点が印象的で面白かった。
「寺田の足の甲はキャベツ」は実はそれ程グッと来なかったのですが、下ネタが多かったり、この話が一番等身大の高校生を描けていたかも知れません。
「四拍子をもう一度」は、これは推理小説っぽい展開とタイトルの回収が秀逸で一番好きだったかも知れません。
自分はメトロノームの件で作者が何を伝えようとしているのか全く理解出来ていなかったため、よりグッと来てしまいました。
「二人の背景」では主人公がカナダ帰りの帰国子女ということもあるのか、他の登場人物よりも大人びた感じがあり、それが逆にこの物語の結末に切なさをより加えているような気がします。
世界中のどこを探したって、こんなにも優しい人はきっといない。
という台詞がとても印象的です。
真紀子の話も読んでみたかった。
最後の「夜明けの中心」は、物語の展開自体は読めてしまいますしグッとくるポイントもあまり無かったのですが、本作に収録されている全ての物語の終着点という感じのする終わり方が良かった。
映画も観ようと思っていますが、原作として比較すれば桐島よりもこっちのが好きでした。
勿論桐島の持つ伝わる人には伝わる破壊力というのものは忘れられないのですが、本作に関してはもっとピュアな気持ちで読むことが出来た気がします。
各主人公の持つ魅力も勿論良いのですが、「卒業式」と「廃校」という2つの終わりが重なるという舞台がこの群像劇の魅力を幾重にも増しているように感じます。
この作品も以前読んだ『蜜蜂と遠雷』同様に何度でも読みたいと思えた作品です。
朝井リョウの作品はこれでまだ2作目ですが、他の作品もどんどん読んでいきたいと思っています。
『少女は卒業しない』というタイトルは色々な意味が込められていると推察しますが、どんなに大人になろうと捨てられない何かがこの作品にはあるのかもな、なんて柄にもないことを考えたりもしました。
多分、すぐに2週目に入ると思います。
そしてそのまま映画も観に行きたい。
『少女は卒業しない』
★★★★★ / (5点)
wakuwaku-mystery.hatenablog.com