「絶対読むリスト」にずっと入っていた作品です。
国内のハードボイルド作品の中でも特に有名なシリーズの一つではないでしょうか。
読む前からずっと楽しみでした。
主人公の造形はまさに読む前に何となく思い描いていた通りで、設定も「ああ、やっぱり」というような正に期待していた「それ」でした。
でも、物語は思っていたほど重厚ではありませんでした。
ただ、それは期待値がデカすぎただけで、期待値は超えなくとも十分面白かったです。
主人公は爪弾きされている元エリート警察官で、とある事件があって出世街道を外れることになってしまった一匹狼です。
名前は出てきません。呼び名は「新宿鮫」です。
全体を通して感情の起伏が感じ取りにくいですが、特に中盤以降は「やっぱり人間なんだ」というような感情の起伏が徐々に表れます。
それと同時に物語はどんどん加速を増していき、どんどん物語に夢中になっていきます。
ある意味<因縁の相手>を追い詰めていこうとする新宿鮫が地道に捜査を続けていく様子と私生活での様子が描かれていくのが序盤から中盤、中盤からは<因縁の相手>を超えた先にある事件を追っていく様子が描かれ、後半ではついにその事件が終焉を迎えます。
全体を通して主人公が如何にもハードボイルドな感じなので、ある程度重厚感は感じられます。
また多少は凄惨なシーンも出てきますが、思ったよりマイルドでした。
先ほど主人公は一匹狼と書きましたが、そんな主人公にも味方と思える人物が何人か登場してきて、その繋がりも面白かったです。
また新宿鮫は上層部や同僚の一部連中から敵視されており、それがまた物語を面白くさせてくれました。
この辺は続編でも期待したいポイントです。
ただ、自分が面白いと思えなかったポイントもありまして、一つが拳銃の件。
自分は拳銃について全く詳しくないんですが、本作は拳銃が一つのポイントとなります。
もう一つが、ちょっとマイルド過ぎるかもしれないということ。
これは裏を返せば読みやすいということにはなるんですが。
そして新宿鮫の序盤のとある行動とそれに繋がる終盤の展開について。
この部分は自分は余計だったかなと思ってしまいます。
この部分である種のカタルシスを与えようとしたのかも知れませんが、自分には不発でしたし、逆効果でした。
犯行の動機もちょっと弱い気がしますね。
とは言え、最初から最後まで十分面白かった。
思っていたよりハードボイルドさが薄かっただけで、物語にはのめり込めました。
特に終盤の展開は熱かったですし、最後のセリフは良かったですね!
作中で捜査をかく乱してくる人の話が出てきますが、これって次回作以降への伏線なのかな。
今回起きた事件は解決しましたけど、新宿鮫の周りには相変わらず敵だらけです。
そういう状況で新宿鮫がどういう風に立ち回るのか。
次はどういう事件に巻き込まれるのか。
新宿鮫は大事なモノを守れるのか。
次回作以降も物凄く楽しみです。
『新宿鮫』
★★★★☆ / 4点