『さよならドビュッシー』に続く岬洋介シリーズ第2弾です。
実は半分くらいですが、ドビュッシーよりも先に本作を読んでいました。
今回は音楽に詳しくない自分でも知っている名器「ストラディバリウス」の音楽大学内での盗難事件に端を発し、色々な事件が重なる物語です。
『さよならドビュッシー』の続編ということですが、主人公は異なっています。
今回の主人公はお金に困りながらも音大に通う男子大学生である城戸が主人公です。
共通する登場人物としては名探偵役の岬洋介が音大の臨時講師として、また前作で前作の主人公のライバル的存在として登場した下諏訪美鈴が居ます。
それ以外は全くの初登場・・・だと思います。
先ほども書いた通り、事件は大学内から忽然と姿を消したストラディバリウスから始まります。
ストラディバリウスもミステリーの世界にはよく登場しますね。
自分は子供の頃に観たコナンや探偵学園Qでその存在を知りました。
とは言え、自分はクラシック音楽に興味はありつつも全く詳しくないので高価な、そして希少な楽器というくらいの認識しかありませんが・・・。
ちなみに主人公の城戸昌はヴァイオリニストですが、盗難されたストラディバリウスはヴァイオリンではなくチェロです。
本作のあらすじはリンク先のアマゾンの商品ページよりもWikipediaにより詳しく書いてあります。
ネタバレも無いのでそちらを参照して頂いた方が早いかと思います。
個人的な感想ですが、前作よりも数段面白さが増していると思います。
前作がやたらと「どんでん返し」を強調していたので、それが自分の中で不発だったこともありイマイチな印象が残っています。
それも本作の面白さを強調している要因なのかも知れません。
本作も終盤で展開が二転三転しますが、自分にはどれも驚きのことばかりでした。
一つだけ序盤のある描写が引っかかていたことがあるのですが、それも回収されました。
こういうどんでん返しは諸刃の剣ですね。
ハマらなければ印象が著しく悪くなりますが、ハマれば効果てきめん。
今回は自分には良い方に作用しました。
ただ前作同様、ミステリーとしてよりも物語として読むのが楽しい作品だとは思います。
正直事件としては読み手側からすると派手なものはなく、それよりも城戸の苦しい生活の中でも希望を捨てない様子や、千載一遇のチャンスを待ち望んでいる城戸の学友、鼻持ちならない講師陣等、リアルな学生な現状とフィクションが上手く融和していて読み易く、またとても面白かったです。
作中には東海豪雨の事と思われる描写がありますが、そのような状況で音楽がどのような役割を果たせるのか。
本作で描かれている状況はフィクションではありますが、東日本大震災の時にバンプの藤原さんがラジオで「こういう時に音楽は何の役にも立たない」と悔しそうに述べた後に歌った力強い唄の事を思い出しました。
あとがきも良かったですね。
あとがきでは音楽家の方が作中の城戸の言葉に心打たれたという事を述べていますが、本家の方が唸るのですからここにもリアリティがあるのでしょう。
この辺りはクラシック音楽愛好家の方たちには堪らない珠玉の名言があるのかも知れませんね。
全体的に満足しています。
この主人公の城戸も気に入っています。
ミステリーとしての謎解きに期待してしまうと期待外れかも知れません。
でも物語としての作り方と登場人物達は面白い活躍をしてくれました。
続編も読みたいですね~。
『おやすみラフマニノフ』
★★★★☆ / (4点)