アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『イヴリン嬢は七回殺される』 / スチュアート・タートン

 

西澤保彦著『七回死んだ男』もまだ未読なのに、本書に手を付けて良いのか一瞬迷いましたが、文庫したら読みたいとずっと思っていた作品なので読んでしまいました。

 

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

 

同じ一日を幾つもの人格を経由し、ループしながら事件の解決を目指すタイムリープものです。

故に登場人物は少し多めかもしれません。

そしてタイムリープものにはルールが付きものですが・・・。

 

今回は久々に途中で挫折するかも、と特に序盤は思いました。

本屋に行けば他に読みたいと思っている本が沢山並んでいて、「こんな作品投げ出して次に移ろうか」と考えたこともありました。

まずルールがよく分からない。

というかルールについては最後まで「?」な所が在る・・・。

ルールもそうですが、話の流れも付いていけなかった箇所が・・・。

一つ例を挙げれば、四日目のクッションの封筒が見つかる流れが何でそうなるのかイマイチ分からず。

封筒の中身は後々判明しますが、この時点では主人公は中身を知りません(これは間違いない)。

でも、封筒がそこにあったことを知っているのは何故?

以前のタイムリープの記憶は無いはず・・・(だよね?)

だとしたら余計に何故?

・・・みたいな細かい疑問が拭いきれず、それが気になって仕方なく話に集中出来ませんでした。

自分が何か読み飛ばしてしまったのかも知れません。

 

巻末の解説にルールの説明が載っていますが、それは理解出来ましたし、理解していました。

ただ細かいルールというか設定が理解よく分からず、この四日目の件も理解出来ませんでした。

同じ事件を異なる人格の視点からやり直し、その行動の結果で何がどう変わったかが分かりにくいということもあります。

 

また、主人公は記憶が全くない状態から物語が始まりますが、そのせいもあって余計に話が複雑に見えます。

読者にも、そして主人公にすら意味不明な唐突な会話や展開が繰り広げられるためです。

正直、物語自体も全く面白味が感じられず、全体の2/3くらいまでは本当に退屈でした。

ルールが分かりづらいですとか、話が複雑とか、そういうこと以前に物語自体がつまらないという事が一番辛かった。

そのつまらない物語を理解するためにページを行ったり来たりして極力流れを理解しようと努めたせいもあって、2/3までは苦行に近かったです。

 

ただ、ラスト1/3は面白かった。

正直、事件の真相なんて全く見えて来なかったし、もうどうでも良いとさえ思っていましたが、ラスト1/3だけで手に汗握る様な展開が二転三転と繰り広げられるので、ラスト1/3は本当に面白かった。

ファンタジーな設定は個人的には余計だったと思いますが、ラストはちゃんとミステリーしてました。

ラスト1/3だけは主人公が格好良く見える。

疑心暗鬼な展開の果てがきちんと描けていて、面白かったです。

ラストはね。

 

全体的には恐らくよく出来た構成になっているのだろうけど、頭の悪い自分には難易度が高かったようです。

レビュー等読んでみましたが、概ね高評価のようです。

ルール設定だけどこかでキチンと明記してくれれば変な引っ掛かりなく読み切れたかも知れません。

時系列等も少し複雑ですが、こちらは理解出来ないほどではありません。

ただし、何度かページを戻って読み直す必要が生じるとは思います。

あとは繰り返しになりますが、ルールの設定よりも物語としての面白味が欠けていたのが個人的には大幅な減点となってしまいました。

ラストは面白かったけど、読むのに疲れた。

そんな印象の、なんとも複雑な内容と複雑な感想を持ち合わせた個人的には奇妙な一冊でした。

『七回死んだ男』はもう少し読み易い物でありますように。

 

余談ですが、色々な人格を経験しながらタイムリープするという設定が映画『TOO TOUNG TO DIE!』を彷彿とさせました(あちらはコメディですが)。

 

 

 

『イヴリン嬢は七回殺される』

★★☆☆☆  /  (2点)