クリスティの戯曲を読むのは3作品目になりますが、これがクリスティの戯曲の中では最も有名な作品ということになるでしょうか。
コロナで上演が中止になるまで、世界で最も連続上演されていた演劇だそうです。
日本でも10年ほど前に上演されたみたいですね。
巻末のあとがきに寄れば、元はラジオドラマとして書かれた物を脚色したのだとか。
そんな有名な作品ですが、意外?にも未読でした。
何かでこの作品の名前を見て「そういえば読んでなかったな」と思い出し、早速読んでみました。
ページ数は200ページ程なのでそれほどしっかりした伏線が張られていたり、壮大な物語が展開される訳ではありません。
これは『検察側の証人』の時もそうでしたが、何となくオチは予想出来ていました。
一つだけ腑に落ちないのは、警察官もっとしっかりしろよっていうことですかね。
でも普通に面白かったですね。
登場人物の色付けが甘かったような気はしますが、展開の持って行き方は流石だなと感じました。
不穏な空気もしっかり描かれていますし、クリスティらしさやイギリスの冬の雰囲気や人間関係等はしっかり味わえます。
ただ自分は『検察側の証人』がかなり面白く感じていたので、本作に物足りなさを感じてしまったのも事実です。
舞台で演劇として見ればまた別の感想になるかも知れませんが、書籍ではそんな感想になってしまいます。
でも伝統的な舞台作品を作り上げるというのは、やっぱり物凄いことですよね。
そういう意味では読んで意義のある作品だったとは思っています。
そんなことよりも感動したのが巻末にある石田衣良の「あとがき」です。
これ程までに自分が思っている事を上手に説明してくれる人が居た事、書かれている内容に完全に同意な事、そしてその表現方法と、個人的には文句なしの「あとがき」で、これを読めただけでも本書を読んで良かった。
自分と同じクリスティ評を持っていた事への嬉しさは勿論ですが、その説明の仕方が流石は作家といった感じで思わず感動してしまいました。
石田衣良の作品は読んだ事がありませんが、IWGPくらいは読んでみようかしら。
本書の解説、というよりは本書を起点としたクリスティ評という感じでしたけど、自分は満足です。
最後にそんな石田衣良の「あとがき」の一節を紹介して締めたいと思います、
ミステリーの黄金期はすぎてしまったのだ。それゆえに、女王はいつまでも不滅なのである。