アガサ次郎の推理日記

推理小説好き(初心者)です。主に読んだ本の感想を書き込んでいきます。

『終りなき夜に生れつく』 / アガサ・クリスティ

 

自分が買ったのはこういう表紙ではなかったんですが・・・。

 

クリスティの自選ベストテンにも入ってる作品でしたので、読むのを楽しみにしていました。

読んでいてこんなに感想が二転三転する作品は初めてかも知れません。

 

最初は「この作品は人生の教訓に成りえる作品かも知れない」なんて思いながら読み進めていました。

「最初は」と書きましたがこの作品、実ははっきりした事件は後半の中盤くらいまで出てきません。

なので、殆どはそういう感想を持ちながら読み進めていたことになります。

 

ところが・・・。

この先を書くことはネタバレになってしまいそうなので、もうこの作品に関しては「読んでくれ!」としか言えません。

この作品に似た展開の物はクリスティ作品の中にもありますし、実際読んでいて頭を過ぎった作品があります。

ただそれらの作品とは全く異なる「余韻」と「味わい」がこの作品には詰まっています。

最初の方からある意味予防線を貼って読んでいましたし、とある台詞が気になって常に「もしかして・・・」とう気はしていましたが、それにしても・・・。

ちなみにレビュー等には結構ネタバレが書かれておりましたのでご注意を。

 

ネタバレしない範囲で感想を。

まず主人公のマイクは他のクリスティ作品では居ないタイプの人物像で新鮮で面白かったです。

彼の思想の一部はうなずける所も結構ありました。

ヒロインのエリーはこれと言って印象が無いのですが、美人で金持ちという設定でもありがちなキャラクターとは自分は感じませんでした。

それが何故なのかは分かりませんが、それはクリスティの手腕によるものなのかも知れません。

自分が好きだったのは建築家のサントニックスで、如何にも優秀そうで真実を見抜いている感じが良かったです。

あとはマイクの母親ですね。

意味深な感じの台詞や態度を見せて、まさにマイクの母親こそ推理小説らしさ助長する素晴らしいアシストを見せてくれた気がします。

この作品ってクリスティの大分後期の作品だと思いますが、クリスティらしい円熟味がありますよね。

タイトルからしてダークな雰囲気が漂っていますが、読み終わった後に思ったのは「クリスティが一番怖い。」ってことです。

 

あとはもう書くことがありません。

この作品のタイトルが全てを物語っていますから。

 

クリスティ作品の中でも異色な方の作品だと思いますが、とりあえず最後に残った自選ベストテンを読了出来て満足です。

同じパターンの円をずっとなぞっているように見えて実は少しずつ膨らんでいるクリスティのテクニックに改めて感嘆します。

小説的にお話の内容としても面白かったです。

何年か経ったらまた読みたいと思う類の作品かも知れません。

(裏を返せば何故かすぐに2回目を読みたいとは思えない。)

 

 

 

『終わりなき夜に生まれつく』

★★★★☆  /  (4点)