これも会社の方に借りた作品です。
前回順番を前後して『検事の本懐』を読みましたが、その「佐方貞人シリーズ」の実質的には第一作となります。
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意図せず順番を前後しての読書となりましたが、それはあまり問題ありませんでした。
個人的にはこの2冊に関して言えばどちらから読んでも良いような気がします。
肝心の内容ですが、読みやすくて内容は面白いのですが・・・。
飽くまで個人的に感じたことなんですが、文章がくどい気がしました。
一度それが気になりだしたら最後までそれが気になってしまい、内容としてはそれ程長くないんですが、どうも脂っこい読後感になってしまいました。
まぁそれも全てラストの展開への伏線になっているのかも知れませんが、自分としては気持ちよくありませんでした。
検察対弁護士という構図で、頭の中で「逆転裁判」を思い浮かべて読んでましたが、意外とそれがまんまの構図だったような。
自分は検事の女性側に何度か敗北フラグが立っていたのでちょっと同情しながら読んでいました。
その辺もちょっと露骨過ぎやしないか?と感じました。
大どんでん返しを狙った作品という訳ではないと思うので、ある意味それも作者の意図通りなのかも知れませんが。
その検察対弁護士が弁論を繰り広げる間に過去の事件の話が挟まり、それが1つに繋がるという物語の構図となっています。
権力の前にひれ伏すしかない被害者には心底同情してしまう事件の内容は良いんですが、復讐計画の方に関しては色んな意味で「それでいいのか?」と思わずにいられませんでした。
飽くまでも作品ありきのトリックとなっているかと思います。
『慈雨』や『孤狼の血』と同じく「正義とは何か?」というのが根底のテーマにあると感じています。
最後の佐方が検察側に言った台詞は説得力はありますしそうあって欲しいとは心から思うのですが、権力や組織の立場・プライドを背負ってしまうと人間なかなかそんなことも言ってられないよな、と寂しい気持ちになりました。
佐方みたいな優秀な人は正義を貫けるのだろうと、ちょっと羨ましくもなります。
レビューを少し読んでも高評価が並んでいます。
実際面白くて、内容もコンパクトで読みやすいと思います。
ただ最初に述べたとおり文章がくどく感じてしまい、どうもそれが気になって仕方ありませんでした。
全体的には良作だったと思っています。
自分は『検事の本懐』での佐方へのスポットライトの当て方のほうが好みだったかも知れません。
『最後の証人』
★★★☆☆ / (3点)