実は本格的に推理小説にハマる前から知っていた作品です。
自分が小学生か中学生の頃で、シャーロック・ホームズや赤川次郎さんは何冊か読んでいるくらいの時期でしょうか。
何で知っていたかと言えば『探偵学園Q』という漫画を読んだからです。
この漫画の初期の方の「切り裂き島の惨劇」という事件のヒントとして、この『エジプト十字架の謎』を含めた他2冊が紹介されていたのです。
ここでその他2冊を紹介してしまうと、そのヒントが何だったのかが推理小説好きの方にはすぐに見抜かれてしまいますので、それは最後に追記で紹介したいと思います。
ちなみに『探偵学園Q』に出てくる数馬くん曰く『エジプト十字架の謎』(探偵学園の中では『エジプト十字架の秘密』の方のタイトルで紹介されています)は名作中の名作ということです。
これまたちなみに、主人公のキュウは自分と同じで『エジプト十字架の謎』は未読のようです・・・。
さて、そういう訳で、クイーンの作品の中でこの作品だけはトリックの肝が少し分かった状態での読書開始となりました。
しかししかし、この『探偵学園Q』のヒントが余計にややこしくさせました。
それがどういうことかは、読んで頂ければ分かってくれるのではないかと思います。
エラリーが最初に頭に浮かんでいたという考えは自分も疑っていましたが、そこからが繋がりませんでした。
ということで、トリックについては自分も疑いはしてましたが結局見抜けませんでした。
また、このトリックの解決は思っている以上になんてことのない、あっさりと、だけどはっきりとした事実からエラリーに見抜かれることになります。
トリックのことはさておき、お話としては今までの中でも色々な要素が入っていると思います。
古代文明に関する話、裸体主義の信仰、地理に関する謎などなど。
ただし、どれも自分の興味を惹くものではありませんでした。
途中にラブロマンスの話も出てきますが、正直クイーンが書くロマンスはあまり上手くない気がします。
事件を複雑にする、という面では効果があるのかも知れませんが、物語として・お話としてはそれほど面白くなかったです。
結局上手く収集出来てない(まぁその必要もないのかもしれませんが)ままでしたし。
それでも、今までの作品に比べれば、ちゃんと物語として機能していたとは思います。
ラブロマンスのことを抜きにしても、正直全体的に読むのに疲れた印象です。
話としてなかなか盛り上がらない場面が続いたからでしょうか。
また解決もなんだかモヤモヤが残るような。
ちょっとネタバレですが、動機が「狂人だから」って一言で片づけてしまうエラリーはどうなの。
完全にフーダニットに寄った解決で、自分好みではありませんでした。
(ちなみに動機についてはリチャード・クイーン警視がちゃんと説明してくれます)
それと「犯人は頭が良い」、「用意周到」ということが強調されていますが、第一・第二の事件はまぁそれも分かるとしても、第三の事件は色んな意味で結構リスク高かった気がします。
ここがもう一捻りあれば、途中までのお話の退屈さもひっくり返って高評価になかった気がします。
ただエラリーが提示したチェッカーの解決法、第一・第二・第四の事件の解決法については面白かったです。
名著と言われるだけあり、面白ことは面白かったです。
ただ個人的には最初の裁判のシーンで盛り上がってから次の盛り上がりのシーンまでの間が長すぎて辛かったです。
とはいえ、やはり推理小説好きとしては読んでおかなくてはならない一冊でしょうし、それには素直に納得します。
徹頭徹尾面白い!と言える作品ではありませんが、クイーンらしいロジカルな解決(動機以外)は堪能できました。
探偵学園Qを読んでから約20年の月日を経てやっと読了できた『エジプト十字架の謎』。
そう考えるとちょっと感慨深いかも・・・いやもっと早く読めよって話ですよね。
期待値が高かったあまりイマイチな部分が目立って記事に書いてしまいましたが、後半は十分面白かったです・
『エジプト十字架の謎』
★★★☆☆ / (3点)
ここから先は冒頭に書いた『探偵学園Q』のネタバレです。
『探偵学園Q』の「切り裂島の惨劇」に出てくるのは正確に作品名だけではなく、それぞれの作品に出てくる人物の肖像画が出てきます。
その肖像画と作品は以下の3つです。
・『最後の事件』 = シャーロック・ホームズ
・『そして誰もいなくなった』 = ローレンス・ウィーグレイヴ
・『エジプト十字架の秘密』 = アンドルー・ヴァン
以上の3つです。
推理小説好きの方なら、この3つの作品と人物の共通点がお分かりになって頂けると思います。
自分もこれでやっと3つとも読めたということになります。
しかし、今思うとこれって結構大胆なネタバレですよね。
自分がこのネタバレの意味に気づいたのは、幸いなことに『そして誰もいなくなった』を読んだあとでした。
それまでは全く意味に気づいていなかったという間抜けな自分に、ある意味感謝です。