『慈雨』を貸してくれた会社の人から借りた本です。
ですが、これってシリーズ物の2作目だったみたいですね。
「佐方貞人」シリーズということで、1作目は『最後の証人』というタイトルで佐方貞人は弁護士の話だとか。
シリーズとしては本作は2作目ですが弁護士になる前の話なので、時系列的には本作の方が先という事になるようです。
さて、そんな本作は短編集となっております。
若手の検事である佐方貞人が鋭い洞察力と検事としての正義をとことん追求するスタイルで数々の事件の真相に迫る、と言ったような話です。
なかなか読みやすかったです。
でも、印象に残るような話はありませんでした。
強いて言うなら「こういう理不尽って腹が立つよね」っていうシーンが多くて、そこは共感出来た気がします。
ただ主人公の佐方貞人という人物がどうも掴み切れずに終了してしまった感があります。
これは1作目から順に読んでいれば違ったのかも知れません。
短編集という事で、本作は全5話で構成されています。
・樹を見る
・罪を押す
・恩を返す
・拳を握る
・本懐を知る
の全5話です。
自分は一番最初の「樹を見る」が一番面白いと思いましたが、全体的に小粒な印象は否めません。
冒頭にも述べましたけど、読みやすいけど印象にも残りにくいんですよね。
決してつまらない訳ではないんですけど、主人公が掴み切れず、謎解きと言えるほどの謎が用意されている訳でもなく、話としては可もなく不可もなく。
全体的に言えば「普通に面白い」くらいの感覚です。
検事として有能な佐方が鋭く事件を解決するシーンはなかなか爽快ですし、逆に上司のせいでその能力が発揮しきれない場面もあります。
いずれにしても、変にハッピーエンドに拘ってる感じがしないところは気に入りました。
理不尽さえも受け入れる。
その現実的な話の構成は好きでした。
でも、それくらいかな・・・。
何度も言いますが、面白くない訳ではないんです。
読みやすいし、退屈することも殆ど無かったです。
ただずば抜けて面白い話が無かったような気がして、それが小粒なイメージを自分にもたらしてしまうのかも知れません。
次の作品も借りてるので、それは読むと思います。
その前に1作目を借りなきゃですが。
柚月裕子さんの作品はディテールが細かくて、そこは読者として信頼が置けますね。
『検事の本懐』
★★★☆☆ / (3点)